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第五章・3
本日の夕食は、熱々のおでんだ。
下ごしらえに手を抜かない紫苑のおでんは雑味が無く、味がしっかり染みていて美味しい。
波留はすっかり嬉しくなって、食べながらしきりに彼の腕を褒めた。
「ああ! やっぱり紫苑の作ってくれるご飯は美味しいね!」
「来夢のマンションで、何食ってるんだ?」
「お弁当とか、宅配ピザとか、カップ麺とか」
「ろくなもん、食ってねえな」
しかし、と紫苑は気になった。
来夢のマンションに行かないで、こっちに来てもいいのか?
それには、波留が答えた。
「何か、人と会う約束があるんだって。今日は、マンション行かない」
すると、それまで静かに箸を動かしていた由樹が喉で笑った。
「来夢、きっとその人に会えないよ。すっぽかされる」
「どうしてそんなこと、解るんですか?」
だって、と由樹は箸を置いた。
「その人は、ここでおでんなんか食べてるんだから」
紫苑は息を呑み、波留は反応が遅れた。
(由樹、何のつもりだ? どうして、波留にそんなこと言うんだ!)
(え……? ここでおでん食べてる、って。もしかして、由樹さんのこと!?)
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