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第七章・6

 クリスマス・イヴ。  紫苑は我が事のように、どきどきと緊張していた。  人気のない教室で、今頃小林がプレゼントを渡して告白しているはずだ。 「小林くん、うまくいくといいね」 「そうだな」  波留と二人で下足棟に立ち、小林を待った。  そして、その姿が現れた時、顔を見合せにっこり笑った。 「小林、おめでとう」 「おめでとう、小林くん」 「ありがとう、遠野。桜庭」  小林は見事に思いを遂げて、今や恋人となった同級生を連れていた。  まだ手をつなぐのは恥ずかしいのか、少し離れて歩く二人が初々しい。 「よかったね、小林くん」 「そうだな」 「今から二人で、どこか行くのかな」 「かもな。寒くなってきたから、風邪ひかないようにしなきゃ」  手をつなげば温かくなって、風邪ひかないのにね。  そんなことを言って、紫苑の手を握る波留。  紫苑も、その手をしっかりと握り返した。

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