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第七章・5
「何? 電話してたんだ」
「ううん、もう済んだとこ」
来夢は、温かなグリューワインを手にして戻ってきた。
二人は、イルミネーションで飾られた広場のベンチに掛けた。
「俺たち、ようやく結ばれるんだな」
雰囲気を作ろうと、そんな浮ついた言葉を紡ぐ来夢が、由樹にはひどく滑稽だった。
「まだ、だよ。最後の審査が残ってるから」
「え? 審査?」
由樹は、長い脚を高く組んだ。
「僕の靴に、キスを」
「な、何言ってるんだ?」
「できないなら、これでサヨナラ」
来夢は、由樹の真意を測れずにいた。
彼の顔色をうかがい、本気かどうか確かめた。
そんな来夢に微笑みかけ、由樹は彼が安心できるようにしてあげた。
「こういうプレイ、嫌い?」
「何だよ、そういうことかよ」
だらしなくニヤけた顔で、来夢は由樹の足を手に取った。
(由樹はSっ気があるのか。でもすぐに、従順なMちゃんにしてやるからな)
(さ、来夢。君はもう、僕から逃げられないよ)
由樹はつま先にキスをする来夢を見下ろし、宣戦布告をした。
「精一杯、嬲ってあげる」
そして一気に、ワインを干した。
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