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第七章・8
「あぁ、美味しい! すき焼き最高!」
「クリスマスっぽくない、って言ってたくせに」
紫苑の家で、波留はもう何度目になるかしれない夕食を食べていた。
紫苑と一緒に。
だけど、ここにはもう来夢はいない。
(もう少し違和感あるかな、って思ってたけど)
意外にすんなり、波留は二人の食卓を受け入れた。
それもそうだ。今まで来夢不在で夕食をごちそうになったことなど、何度でもある。
(来夢は、僕のことそれほど好きじゃなかったのかもしれないな)
だけど。
だけど紫苑は、いつも僕を見てくれてた。
いつでも気にかけて、優しくしてくれてた。
「ね、紫苑」
「何だよ、おかわりか?」
「違うよ。あの、ね。ありがとう」
「ああ、ごちそう様か」
「違うよ!」
まだ噛み合わないこともある二人だ。
それでもクリスマス・イヴという特別な日は、紫苑と波留をぐんと近づけてくれる。
交代でバスを使い、部屋着になってしまうと、二人は妙に緊張してきた。
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