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第八章 二人のメリークリスマス
「ね、紫苑。今夜はお父さん、夜勤?」
「夜勤じゃないけど、帰らないって」
恋多き父は、新しい恋人と共にイヴを過ごす。
こういう浮気性は、さすが来夢の親だ。
「いっそ、すごいよな。こうもコロコロ相手を変える、って」
「来夢みたい」
あ、と紫苑は口を塞いだ。
「ごめん。そんなつもりで言ったんじゃないんだ」
「ううん、平気。僕はもう、来夢の恋人じゃないんだから」
そして、波留は紫苑の腕に手を絡ませた。
「お父さんいないのなら、泊ってもいい?」
「い、いいのかよ。波留、泊っても」
下を向いたまま上目遣いで、波留はうなずいた。
「泊りたい。紫苑の部屋に」
そして、くん、とつま先を立てた。
二人の唇が重なり、甘い夜が始まった。
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