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第八章・8

「ね、今度は僕が拭いてあげるね」 「ありがとう」  紫苑の体の汗や体液を拭きとりながら、波留は言葉を噛みしめた。 「あの、ね。紫苑が僕の、運命の番だったらいいなぁ」 「だったら、いいな。だけど、俺はβだ。それはαとΩの間にしか成立しないことだろ?」 「僕の幸せは、僕自身が決めるから」 『僕の幸せは、僕が決めるんだ。僕の選んだ道を進んで』  波留は、由樹の言葉を思い出していた。 「僕の幸せは、僕が決める。だから、紫苑が僕の運命の番になって」 「俺なんかで、いいのかよ」 「紫苑が、いいんだ」  波留は、しっかりと紫苑の体に抱きついた。  その腕をさすりながら、紫苑はうなずいた。 「波留、俺の番になってくれる?」 「うん。うん、うん。なる。運命の番に、なる!」  紫苑、好き。大好き。愛してる。  聖なる夜に、波留と紫苑は結ばれた。  永遠に離れることのない、番になった。

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