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お兄さんといいことがしたい!①

※弟33歳、兄34歳の年末。   「お兄さん」 「何」 「お兄さんといいことがしたいです、久しぶりに」  狭い六畳間いっぱいに敷き詰めた布団に、僕と兄は潜り込んでいる。母は忘年会だかなんだかで出たっきり帰って来ない。そろそろ九時を回るころ。兄の向こう、布団の端には、はしゃぎ疲れた小さな理仁(りひと)が、こちらに背を向けて眠っている。 「ね、」  そっと囁けば、 「いいことって何」  なんて兄はしらばっくれるが、常夜灯に照らされた薄闇の中、いたずらっぽくニヤリと笑った。本当は兄だって僕としたい癖に、いつも僕に言わせようとする。兄はちょっとズルいのだ。兄の身体を抱えて転がし、理仁の方に向かせた。熱くなった僕の身体の芯を、兄の太腿の後ろ側に押し当てる。 「何、やりてぇの?」 「はい、お恥ずかしながら」  兄の肩が小刻みに震える。くっくっと兄は声を押し殺して笑う。 「全然、恥ずかしそうじゃねぇ」 「ね、いいでしょ?」  腕の中にすっぽり収まった兄の身体を、ぎゅっと抱き締める。兄はこちらに背を向けたまま、少し「うーん」と唸っていたが、 「ちゃんと避妊してくれるなら」  と、やっと許可を出してくれた。 「勿論、お任せください! ちゃんと用意しときましたから」  僕は枕の下に隠しておいた避妊具を取り出し、兄に見せた。 「よく温まってるので、冷たくなくて快適かと思います」 「バッカ……」  兄はまた、くっくっと肩を震わせた。  避妊具を一旦枕の下に戻して、僕は上半身を起こし、兄の頬と敷布団の間に手を差し入れた。兄の顔は相変わらず小さくて、僕の掌にすっかり入ってしまうほどだ。  頬をぐっと支えて上向かせる。僕が顔を近付けると、兄は躊躇いがちに目を反らし、そして瞼を閉じた。  最近、兄は色んなことに自信がないのだ。たとえば、近頃はあまり歯医者に行けていないから、歯と歯の間に歯石が溜まって息が臭いと思うとか。たとえば、もうすっかりオジサンだから、きっとΩの匂いよりもオヤジ臭の方がキツく臭ってるはずだとか。そんなどうでもいいことを気にして、僕とのスキンシップに消極的になっている。  兄の唇を舌で割り、押し開いて、深く口付ける。奥歯から丁寧になぞり上げる。角度を変えて何度も何度も口付ける。ほら、お兄さんの気にしていることなんか、気のせいにすぎないんだから。唇の端から溢れた唾液だって全部舐め取ってしまう。首筋に鼻面を埋めて、耳の後ろの匂いを犬みたいにクンクン嗅ぎまくる。あー、お兄さんの匂い、やっぱりいい匂いだぁー。

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