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第四章・9
カウンター席に隣同士で座った伊予と英治は、メニューを手にした。
「どれが伊予のお勧めかな?」
「英治さん、コーヒーは酸味と苦味のどちらが好みですか?」
石丸は目を円くした。
(伊予、とか! 英治さん、とか!)
すっかりラブラブの二人は、メニューを眺めるだけでいちゃついている。
「やれやれ。あの目薬に、こんな副作用があるとは思っても見ませんでしたよ」
「まあ、いいじゃないか。お二人とも、幸せそうだ」
そうですね、と石丸もマスターと顔を見合せ微笑んだ。
『がらくた』に、新しい常連さんが仲間入りだ。
「マスター、トラジャを二つください」
「はい、かしこまりました」
肩を寄せ合う伊予と英治は、コーヒーの香りに包まれた。
幸せの香りいっぱいに、包まれた。
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