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第一章 最悪の初めて
拳が空を切る。蹴りが唸りを上げる。
全てをかわす。まるで、舞うように。
私立城北高等学校、男子体育の総合格闘技の授業。
一ノ瀬 凱(いちのせ がい)と、由良 怜也(ゆら れんや)は、紅白に分かれた練習試合を行っていた。
クラスでも1,2を争う強者二人の試合だ。
周囲は歓声を上げ、試合の行方を見守っていた。
「一ノ瀬、惜しい! もう少しでヒットだったぞ!」
「由良、すげえ! かわすかよ、あれを!」
凱は舌打ちした。
怜也との手合せは苦手だ。
相性が悪い、とでも言おうか。
プレッシャーは与えているはずだ。
彼の肌は汗ばみ、息を切らせているのだから。
しかし、決定的な一撃が放てない。紙一重でかわされる。
焦れた凱は、奇襲をかけることにした。
ひときわ大きく鋭く、蹴りを放つ。
やはりよけてしまう、怜也。
だが、その着地の瞬間、両脚でそのまま態勢を整えていない体を挟み込み、全身で捻った。
いわゆる、蟹挟みという技だ。
下半身をとられた怜也は、そのまま地に倒れた。
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