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第三章・16

 大勢の『由良怜也命の会』と、ごく少数の『一ノ瀬凱愛し隊』の会員同士での協議の結果、『アレはなかったことにしよう』という意見に落ち着いた、ということだった。 「なかったこと、って何だよ!」  匠は、『ひぃ! すッ、すみません!』とは言わなかった。  ただ腕組みをし、難しい顔をしてうなずく。 「無理もないと思うよ。由良くんがセクハラの被害者、って事にならなかっただけでも御の字だよ」 「セクハラ!?」  当の怜也はといえば、これまた何事もなかったかのように笑顔で友達に朝の挨拶などしている。 (ちくしょう! キスどころか、妊娠するくらいのコトまでヤッてるんだぜ、俺たちは!)  だが、それを公言すると怜也はもう口もきいてくれなくなるだろうから、黙るしかない。  仕方がない、今夜は新酒でヤケ酒だ、と心に決め、凱は面白くない顔をして席についた。  秋の光だけは、温かく凱を包んでくれた。

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