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第一章 これは浮気?
そろそろ夏だ。
暑くなってきた。
屋内はまだ涼しいが、風のない日は過ごしにくい。
図書館に怜也の姿を見つけられなかった凱は、そのままぶらりと外へ出た。
こんな時は。
こんな時は、図書館からわずかに離れた庭園の木陰にいることの多い怜也。
その日もやはり、大きな胡桃の木の下で本を開いていた。
読書の邪魔をしないよう、そっと隣に座る。
人の気配を感じた怜也が、ふとこちらを見るが、それが凱だと解かると安心したように微笑み、また活字に目を落とす。
そよりと頬をなでる風が心地よい。
かすかに鳥の鳴き声が聞こえる。
穏やかな日。
ここでこうして二人並んでいるだけで、満たされた気分に浸ることができる。
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