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第三章・8

 凱の唇に、怜也の舌が恐る恐る触れてきた。  凱はわずかに舌を伸ばして、その先にかすかに触れた。  唇だけより、ちょっぴり熱いキス。  降参、というように怜也が顔を離していった。  頬が赤く染まっている。  どんなにキスを繰り返しても、どんなに肌を重ねても損なわれない初々しさは、怜也の素敵な魅力だ。 「熱い……」  ふぅ、と息を吐いてつぶやく、戸惑いを隠せない顔が可愛い。 「夏だから、だろ」  凱の言葉に、怜也はにっこり笑ってうなずいた。  夏が来る。  二人で迎える、初めての夏が来る。

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