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第三章・7
「んだよ。キスくらい、いいじゃん。堅いなぁ、もぅ」
は、とした怜也の顔に、凱は慌てて口を塞いだ。
しまった。
真面目、とか、堅い、とかいう言葉は、怜也を傷つけるNGワードだ。
ごめん、と凱が謝る前に、怜也の方から尖らせた唇で訴えてきた。
「もう一度」
「え?」
「もう一度、する! キス」
凱は参ってしまった。
こうなると意外に頑固で意地っ張りなのだ、怜也は。
なだめる暇も与えず、怜也は眼を閉じ軽く上を向いている。
ここは一度キスして、ご機嫌をとっておくか。
もう一度、そっと唇を重ねた。
時間が止まる。
風だけが通り過ぎてゆく。
互いの体温だけが、感じられる。
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