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第三章・6

 ちょっぴり。  ほんのちょっとだけ刺激が欲しいところだが。 「なぁ」 「ん?」  こちらを向く怜也に、そっと顔を寄せた。瞼が閉じられ、二人の唇が重なった。  風が葉を通り抜ける音だけが聞こえる。  ちゅっ、と音をたてて唇を離し、もう一度重ねた。 「……」 「!?」  ぱ、と怜也の顔が一瞬のうちに離れて行った。 「もう! 調子に乗らないでよ!」 「え~。せっかくのキスだろ。本格的にやろうぜ」 「外でのキスに……、舌とか入れないで!」  あ~あ、と凱は腕を頭の後ろで組んだ。  キス、は確かに抵抗なくできるようになった怜也。  おかげさまでセックスの方もあれから順調だ。  夏に向けて、殻を脱いだ感のある彼だが、もうひとつ砕けきれないところがある。

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