144 / 144

第二章・12

   やれやれ、とその背中を見送った。  そんな負けず嫌いなところも大好きだ。  この調子だと、追い付かれるのも時間の問題かもしれない。  だったら、今日はソフトドリンクでなく、よく冷えたビールで乾杯かな。  少しずつ、でも確実に変わってきているのは怜也も同じらしい。  可愛らしかった少年が、美しくも頼もしい男になってゆく様を見るのは、なかなか楽しく嬉しい。  そして少しだけ照れくさいものだ。  その傍に居られることを、凱は喜んだ。  生まれて初めて、神に感謝した。 「でも、まだ負けるわけにはいかねぇな!」  弾んだ声で一言気合いを入れると、凱もダッシュした。  遠くに離れてしまった怜也を追いかけ、走り始めた。

ともだちにシェアしよう!