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第1話
2歳上の兄貴に兎に角構ってもらいたかった。
両親は仕事で居ないのが当たり前。
家政婦さんが掃除も食事もしてくれる。
けど遊んではくれない。
構ってもらいたくて、ずっとくっついてた。
兄貴が学校に行き始めて2年生の夏休みにとうとう、友達と遊ぶからと俺を置いて行った。
それが面白くなくて、兄貴の大事にして居た物を壊した。
「こんな事をするような奴は弟でも何でもない!俺を兄貴だと言うな!俺の弟だと言うな!」
叩かれた左耳よりも頬よりも、胸が痛かった。
有り難かったのは、この家が無駄に広かった事だ。
奥の間に行けば、誰も来ないし、会う事も無い。
食事は部屋に持ってきてくれるし、風呂もトイレも有る。
テレビは有料チャンネルに契約されているから暇も潰せる。
たまに親が顔を見にくるので、元気にニコニコしてれば問題なく過ごせる。
学校に通う前の健康診断を受けに学校に行った。
久しぶりに兄貴を見かけたけど、友人達と一緒に去っていった。
他人だなって思った。
健康診断の結果、俺は兄貴と同じ学校に行けなかった。
兄貴に叩かれた左耳は、全く聞こえなくなって居たのだ。
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