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第16話

昼間に思っていた事を説明した。 この街の便利さに甘えて買い忘れが気になり出した事。 田舎だと牧瀬さんに甘えていた事に気づいた事。 家事のし忘れても怒られる事が無い事。 「ちゃんと俺がやらなければいけない事を出来てなくても紀明さんは気にしないでしょ?だから甘えてたんだなぁって」 言ってて申し訳ない気持ちがいっぱいで、ごめんねと謝ろうと紀明さんの目を見て後悔した。 砂糖も蜂蜜も糖分という糖分を全部集めて混ぜ合わせたくらい甘〜い声で、「幹都をもっとダメにするからね」と囁き、 もう無理だから、もうダメ、もう死んじゃう。 って言う俺の訴えを、 まだ大丈夫、まだイケるでしょ、俺無しじゃ生きていけなくなってね と交わして、気が付いたのは、翌日の夕方と訳の分からないタイムワープをさせられた。 紀明さんにセックスでいつか殺されるんじゃ無いんだろうか? そんな事を考えながら起きようと体を動かすも腰が、各所の関節が悲鳴を上げていて動けない。 だけど、トイレに行きたい。 切実に! 膀胱が大変非常にまずい。 出せる最大の声で紀明さんを呼ぶ。 枯れた喉ではたいした音は出なかったけど、気づいてくれた。 「もう我慢できない!トイレ!!」 「ふふふ〜ん、幹都行きましょうねぇ♪」 鼻歌交じりの返事をしながら、トイレに連れていってもらい、介助をしてもらい、リビングのソファに座らせて。 「紀明さん楽しそう。」 呆れて溜息をこぼすも気にした風もなく、 「俺無しじゃ生きていけないようにしたいからね。幹都の世話ができるの楽しいよ」 あーますます俺のダメ人間化が進んでいくなぁと、嬉しいと思う時点で俺も大概なんだと思う。 これが俺たちの家族の形。

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