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勇敢な子豚──18.*
ソンリェンはトイの我慢を綺麗に無視し、今度は緩く起ち上った肉棒の下の膣口に指を伸ばしてきた。胸への刺激でしとどに濡れそぼったそこにつぷりと指が挿入され、快楽を引き出すようにゆるく掻き回される。
「ぐしょぐしょじゃねえか」
「あっ、ひ、ぁう」
「うまくしゃぶれたご褒美くれてやる」
「あっ」
いうや否や、今度こそ体をシーツに叩きつけられて脚を開かされた。ソンリェンの肉の杭は、つい先ほど出したばかりだというのに真っ直ぐに上を向いていた。
それが、トイのほころんだそこを目掛けて沈んで来る。ざっと血の気が下がった。
「待って、待……ソンリェン!」
「うるせえ」
「ちがっ……洗ってな、い!」
トイの悲鳴にぴたりとソンリェンが動きを止めた。その隙にトイは必死にソンリェンに事実を伝える。
「洗って、ねえ……から、汚い……からっ」
拒むつもりはない。今のトイはソンリェンの玩具だからそもそも拒めない。
ただ汚いと罵られ、ソンリェンの暴力に晒されてしまうのは恐ろしかった。
家に着いた数分後にはソンリェンの来訪があったため、用意しておけと命じられたというのにトイはまだシャワーすらも浴びれていないのだ。
いつもソンリェンの相手をする時は身体を清めておかないと怒られた。
ソンリェンは潔癖な男だ、トイの体の中に他者の痕跡があるのを何よりも嫌う。それはトイを共有している他者への嫉妬でもなんでもなくて、ただ自分以外の他人の体液に塗れた秘部を使用したくないだけだ。
屋敷に監禁された初めの頃はそれに気づかなくて、一度レオに犯されたことを伝えずにソンリェンに組み敷かれたことがあった。
一度挿れて引き抜いた瞬間にレオの白濁液を自然とかきだしてしまったソンリェンに、恐ろしい形相でベッドの上から引きずり降ろされた。床に頭をぶつけて悶絶するトイに、ソンリェンは絶対零度の視線を向けて来た。
『俺が使う時は使用された穴を洗え』
ソンリェンが避妊具を用意している時は誰にどこをどう使用されても構わないと言った体だったが、そうでない時はソンリェンに身体を開かれる前に汚れをとっておかなければならなかった。
トイの身体を綺麗にさせる時間がない時でさえも、する前は濡れた布などで挿れる部分を必ず拭くよう命じられるほどだ。
ただ突っ込んで使われるためだけに必要な穴だけを綺麗にする。ソンリェンに玩具にされる時は自分が性処理道具であることを常に自覚させられていた。
昨日はトイの体に恐怖を再び植え付け服従させるために勢いで洗わずに突っ込まれたりしたのだと思っていたから、今日は流石にそんなことはないのだろうと思っていたのだが。
「いい」
静かな声色にぱちりと、瞬きをする。
「別にいい」
「え……」
耳を疑った。今のはソンリェンの口から出てきた言葉なのだろうか。
「いいって、あ、あの……そんり、あ、ぁァ、あっあ──」
ずぶり、と入ってきた質量に引いてしまった腰を強い力で引き戻され、そのまま一気に奥まで挿入された。
「ひ、ぅ……ッ」
めりめりと残酷な音を立てながら、ソンリェンの太い凶器はためらいもなくトイの肉をかき分けてきた。ずん、と奥に響く振動に背筋から脳天にかけて痺れが走る。
灼熱の杭に視界がくらりと揺れた。突き入れられる熱はこれまで通り容赦がない。
「い、い、た……」
「何が痛いだ、濡れてるくせに」
「う、ぅあ、あ」
たとえ濡れていたとしても昨日の今日だ、しかも無理矢理挿入されたせいで切れた内壁はまだじくじくと膿んでいる。
視線を落とせば繋がっている部分の隙間から一滴赤が零れていた。それでもソンリェンは躊躇なく腰を推し進めてきて、硬直するトイの両足を再び抱え上げ、本格的に内部を穿ち始めてきた。
「ひ、ぁ──あッ、やァ、ああ、っう、いッ……、」
「血ィ、出てんな」
内壁の具合を確かめるように、ぐるりと腰を回されて体が浮かび上がる。
「は、処女みてえじゃねえか、なあトイ」
「はあ、や、痛い、ひぃ、いたっ、くっ……ぁ……」
連れてこられた時、トイの処女膜を貫いたのは確かエミーだ。
明るく笑う屈託のない少年のような男に躊躇なく突き破られた光景はあまりにも衝撃的だった。ただソンリェンが何番目だったのかは覚えていない。痛みと恐怖に耐えることで精一杯で誰に穿たれているのかなんて確認する余裕もなかった。
今だって、がくがくと揺さぶられながら視界がぶれているせいでここがどこなのかも曖昧になってくる。トイの部屋か、あのおぞましい屋敷の一室か、誰かの部屋か、懲罰室か、育児院か。
明るく笑う子どもたちの姿が脳裏に浮かぶ。今日はみんなに絵本を読んであげた。
勇敢な子豚のお話だ。真夜中に呑気に出歩いていた所を、馬車に攫われ、黒い檻に捕らえられ、闇の王様に食われようとしていたのに機転を利かせて地獄から抜け出した頭のいい子豚。
足掻いても足掻いても恐怖と絶望に打ち砕かれて抵抗すらもできなくなって、最後は用無しとばかりに壊されひとりぼっちで捨てられたトイ。
自らの手で自由を掴んだ強い子豚の存在は、トイとはあまりにも違い過ぎた。
「……ぁ、あぁァ、ぶ、ぶた……が」
「あ?」
彼らの目の前で這いつくばって皿を舐めていた記憶が甦ってくる。
トイは豚だった。けれども絵本の子豚のように逃げることもできなかった。トイを囲む黒い檻はどこまでも続いていく。
トイに自由は訪れず恐ろしい物語も終わらない。仲良くスープなんて飲めない。
「やみの、おうさま……」
「おい」
「逃げ……トイ、トイ、は、……ッ、ぅ」
記憶の中の惨劇と現実が混じっていく。
もう目の前にいるのが誰なのかも曖昧だ。エミーかレオか、ソンリェンかロイズか、それとも別の男か。
誰だっていい。もう誰でもいいから。
「──チッ、飛んでんじゃねえよ」
誰でもいいから、優しくしてほしい。
そんな浅ましい願望が見え透いていたのだろう。ソンリェンが苛立ったようにトイの足首を掴み上げ激しく腰を穿ってきた。乱暴な突き上げに脳内の霞が吹っ飛ぶ。
「ぁぐ──ッ、ァあ」
「おら目ぇ開けろ」
「や、あ、ぁ」
「答えろ、今てめえを犯してんのは誰だ」
「ァ、あ、あ、あ」
必死に震える瞼を押し上げて、トイを好き勝手に蹂躙してくる男を見る。
そこにいたのはソンリェンだ。そうだ。今トイはソンリェンに犯されているのだ。
「答えろ、誰だ」
「ぁっ、そ、そんり……」
ばちゅんと叩きつけられ小さな声を諫められる。
「ぁうッそんり、…ッ…ソンリェン……ぁ」
「そうだ、お前は今誰のもンだ」
「ん、ひ、ぁあ」
視界が濡れる。今トイは泣いているらしかった。
「さっさと答えろ、お前は誰の玩具だ」
「そん、りぇん、の」
「……そうだ俺だ。俺のことだけ考えてろ、いいな」
こくこくと頷けば、幾分か和らいだ雰囲気のソンリェンに腕と腰を引き上げられて、繋がったまままたソンリェンの腿の上に乗せられる。
しかし今度は背面ではなくて向かい合って。自重も重なって深く入ってくる肉欲が恐くて、思わず腰を浮かしてしまう。
「や、ん」
「逃げてんじゃねえよ」
「だ、って……だって、こわ、い」
「言ったろ、逆らうな」
命令だ、逆らっちゃだめだ。そうは思っていても低すぎる声に恐怖は増していく。言い聞かせても痛みを植え付けられてきた身体は自然と逃げを打ってしまう。
案の定腰を掴まれ、体勢を崩すかのように下腹部をばちゅんと下に叩きつけられた。
「ぁ、ぁ──ッあ、ア!」
奥までみっちり犯されて目の裏がちかちかする。
ソンリェンの雄芯は、隙間なく埋められてしまった。
「あ、か……ふ、か」
「痛いか」
頷くこともできずに、陸に上げられた魚のように細かい呼吸を繰り返す。目の前にある厚い肩にくらりと倒れ込みそうになって耐えた。
霞んだ脳裏に蘇った記憶に、無意識に身体が自分の行動を制したのだ。
いつだったか、ロイズに覚えさせられたきじょうい、というやつをやれと、珍しくソンリェンに要求された。
あれは普通に犯されるよりも深く入ってきて奥が苦しくて嫌だったのだが、やれと言われれば逆らう術はない。怯えを必死に飲み込み勃起したソンリェンの上に恐る恐る跨り、ゆっくりと腰を降ろそうとしたのだが。支えがほしくてソンリェンの肩に置いた手をぱんと払われた。
その時に吐き捨てられた一言を覚えている。
『おい、反対側向け。それ見てると萎えんだよ』
ソンリェンの酷く冷めた目線の先には、トイの萎えた男の象徴があった。
ソンリェンがトイのそれをあまり弄ろうとしない理由を、レオは「あいつはノーマルだからな」と言っていた。
トイとしては男性器をいたずらに弄られ痛めつけられるのも嫌だったのだが、後ろ向きになってソンリェンのそれを自ら深々と咥え射精へと導くためだけに腰を上下に振り続けるというのも、惨めさが募って嫌だった。
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