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過去──56.*

 手に入れた玩具には、それぞれが愉しみを見出していた。  ロイズは柔らかな言葉使いのまま激しい苦痛や気を飛ばしてしまうようなえげつない快感を与えては、言葉で責め、玩具が狂い崩れていく様を堪能していた。  新しく手に入れたものを子どもで試したがる男で、使ってみましょうか、と副作用があるかもわからない怪し気な薬を打ちこみ、本物の玩具を拘束した子どもに突き入れては一日中イキ狂わせそれを眺めるということもやってのけた。  聞けば皆で輪姦する前に子どもの汚れた身体を清め、綺麗に使えるようにと胃の内容物の処理をこなしたのはロイズだったらしい。恐ろしい男であるというのは身に沁みているのか、子どもはロイズに一番怯えているようだった。  皆で子どもを愉しむ際にも、場を取り仕切るのはロイズだった。  エミーは、得意の残酷な無邪気さで子どもを翻弄していた。  エミーの気分は日によって変わる。恋人ごっこがしたい、という理由でとろけるように甘やかし丁寧に抱く日もあれば、ペットを飼いたい、という理由で玩具に首輪をつけて屋敷内を這いつくばって歩かせたり動物のような生活をさせた日もあった。  些細な行動で機嫌を損ねては子どもをいたぶりつくし、ストレスの捌け口にしている日もあった。機嫌がいい日であっても何もなくてつまらないなあ、という理由でエミーが提案する『遊び』には皆がよく乗った。賭けの対象を子どもにして、よく金を動かした。  順番にありとあらゆる手でイカせ続け、イカせられなくなった人の負け、だとか。ボードゲームをしている間に子どもに玩具を突き入れて、皆で順番にさいころを転がし、目が奇数だった場合スイッチを最大にするだとか。  時計を用意し、順番に子どもを犯しては、一番はやく子どもの中で射精できた人が勝ち、だとか。  気まぐれに身体を壊そうとしてくるエミーを子どもは常に恐れていた。  レオは常に従う男だった。    子どもにこれをやれと言われれば顔色一つかえず、さらりとどんなことでも嬉々としてやってのける。  軽薄さをにじませてはいるが、この中では比較的感性がまともで彼なりのポリシーもある男だったが、精神の肝心の根幹部分が狂っていた。  レオは外では友人も多く、それなりの気配りもでき体の関係がある女性に対しても紳士的だが、玩具を完璧な玩具として扱えることのできる男だった。手中に収めた人間以外は人間として扱わない。優しく女性を抱いてきた次の瞬間には、泣き叫ぶ子どもを乱暴に犯すことのできる男だった。  特にエミーを弟分として可愛がっている節があるために、エミーと一緒に楽しい遊びと称して子どもにあらゆることをしては腹を抱えて笑っていた。  ある部分で冷徹で、話を聞いてくれそうで一切聞いてくれないレオに、子どもは得体のしれない恐怖心を抱いているようだった。  ソンリェンはというと、気が向いた時は適当に3人に混ざったり、性欲が溜まり処理をする相手がいない時には子どもをいたぶっていた。  嬉々として場を取り仕切ったり、遊びを提案したり、誰かと連携を組んで子どもを壊そうとしたりもしなかった。どちらかと言えば受動的だった。  ソンリェンにとってトイという存在は、仲間が連れて来た両性の性欲処理道具でそれ以上でもそれ以下でもなかった。元々の加虐性故に、好き勝手に乱暴を働くことができる子どもの存在にはそれなりの意義は見出してはいたが、自分が突っ込んでいる時以外はどうなろうとどうでもいいし、激しい揺さぶりに出血しようが泣こうが快楽に喘ごうが、抵抗さえされなければどうでもよかった。  自身の嗜虐心を満たすために使えれば、それでよかった。  だから、あの出来事に対して子どもにあそこまでの怒りを覚えたことは、ソンリェン自身にとっても予想外のことだった。  ****    目が覚めた時、ソンリェンの陰茎は反応していた。男の生理現象だ。  未だ覚醒しきっていない頭でシャワーでも浴びるかと起き上がった所で、3ヶ月前にこの屋敷に連れて来た玩具の存在を思い出した。そうだ丁度いい穴がここにはあった。  呼びだそうとベッドの横にあるベルを鳴らしたが、目当ての玩具が部屋に来る様子は一向にない。  呼び鈴はトイのいる部屋で大音量で流れる。また、どの部屋の主が呼んでいるのかもわかるようになっているため、気が付かないわけがない。  ということはだ、つまり無視をされているというわけで。  青筋が立つ。いい度胸じゃねえかと適当に服を羽織って玩具のいる部屋へと向かう。場所は同じ階の端なのでそこまで離れてはいない。  ノック等する必要もないため、鍵もついていない扉をがんと蹴り飛ばして開けると、他の部屋に比べては狭い一室のベッドの上で、トイは突っ伏して寝ていた。  いや、寝ているというのには語弊があるかもしれない。  だらりと下がった両足は床につき、上半身だけをベッドにしだれかからせた体勢のままトイは気絶していた。ソンリェンの呼び鈴の大音量にも気づけないほどに。  帰ってきたのは夜中だったため、昨夜何が行われていたのかは知らないがこの状況を見れば一目瞭然だった。  この部屋か誰かの部屋であの3人に気が済むまで犯されたか、それとも懲罰室に連れていかれて好き放題やられてから追い出され、ふらふらの状態で自室とも呼べない牢獄へ戻りそのまま身を清めることもできずにぶっ倒れたか。  ここ数週間のトイへの扱いはこれまで異常に酷くなっているので、後者のような気がする。  もちろんソンリェンには関係のないことだが。元々はこいつがまいた種だ。 「おい」   苛立ち紛れに呼び掛けてもトイはぴくりとも動かない。もしや死んでいるのかと近づいてみればか細い呼吸音が聞こえて来た。

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