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過去──55.*

 二人分の欲望を既に受け入れているはずのそこは、やはり狭かった。先ほどロイズが全部入れても大丈夫だったので遠慮することなく腰を押し付ける。  内壁をかき分けるように押し進み、もうこれ以上進むことができないというところまで行き着いてから腰を止めた。薄い腹はねじ込まれた棒の形にあわせてぽっこりと膨らんでいる。手を添えれば自身の竿の脈打ちすらも伝わってきた。  ここまで入れたというのに、まだ全て埋まりきっていないというのが驚きだ。ねっとりと包み込んでくる内壁はそれなりの快感を与えてくるが、ガチガチに固まった体は動きづらそうだった。  これは本当に良くなるのだろうかと疑いたくなる。 「ァ……あ」 「おい緩めろ」 「……い、たぃ、たい、ァ、あ……」 「狭えっつってんだよガキ、おら、動けねえだろうが」 「鬼畜野郎だな。あとガキじゃなくてトイちゃんだっつってんだろ」 「もおソンリェン、まだ慣れてないんだからしょうがないじゃん、可哀想だよ?」 「ソンリェンはいつもせっかちなんですよ」  人のことを非難してくるくせに、子どもの手足を押さえる外野達の手はちっとも緩む気配がない。そもそもこれを連れて来たのはソンリェン以外の鬼畜共だ。こっちは使ってもいいと言われたから試しに突っ込んでるだけだと怒鳴りたくなったが、一つ舌打ちをすることで苛立ちを消化し律動を開始する。  ぽこりと膨らむ薄い腹にまるで薄い風船だなと、と鬼畜共に負けず劣らずな事を考えつつ、腰を押さえつけて力任せに何度も出し入れを繰り返す。  絶叫し、苦痛にのたうつ子供の足がびくびくと痙攣するが知ったことじゃない。こちらはこの後に控えている憂鬱な客のせいで時間もないのだ。  能天気で化粧と睫毛と香水だけが命とでも言わんばかりの女性の顔を思い出したらますます苛立ちが募って、子どもの身体が浮くぐらい腰を素早く打ち付ける。 「うーわ、乱暴」 「まあ、それがソンリェンだもんねー」 「なーんでそんな誇らしげなんだよエミー」 「エミーはソンリェン大好きですもんねえ」 「黙れてめえら、こんなことしてる時点で乱暴もクソもあるか、よ」 「……ひっ……ィ、ぐ、ァ」  周囲の雑音を無視しつつ、とにかく今穿っている穴に集中する。  ぐち、ぐち、ぐち、と容赦なく挿入を繰り返していくうちに、あれだけ窄まっていた内部がだんだんと緩んできた。ある程度進めばそれなりに広がってもいるようだ。ただ、潰れた蛙の断末魔のような悲鳴はいい加減耳に煩かった。 「ァああ、ぃ゛、アッ、……」 「うるせえな。おいエミー、口抑えろ」 「ええ、トイの声可愛いじゃんか」 「できねえなら布突っ込め」 「もー、しょうがないなあ」 「んッ……ぐ」  機嫌の悪いソンリェンの指示に従い、エミーが子どもの口を抑えつけたのを見計らって円を描くように腰を回せばぐちゅんと膣内が広がって、各段に具合がよくなった。  奥に広がった突起が一粒一粒吸盤のように吸い付いてくる。エミーとロイズがハマったのはこれか。  確かに、キツいが中はそれなりに柔くて少しでも気を抜けばすぐにでももっていかれそうだった。仲間達の前で堪えきれずに直ぐに達するなどみっともない姿を晒したくは無い。  腰にじわじわと集中していく熱い快楽が少しでも引き延ばせるようやり過ごしながら、透明な液体に交じったピンク色が沫立つ浅い入口部分に肉欲の側面を擦りつける。 「~~~ッ、ンっ、ふ、ぐ」  内壁を抉じ開けるように何度も引いては何度も突き入れ、時折かき混ぜるように腰をまわすと残っていた誰かの精液が絡まり、ぬちぬちとした粘着質な音が響いた。  3人に見せつけるように腰をギリギリまで引き抜き、躍りかかる様に腰を突きだしパンッ、パンッと骨がぶつかるくらい激しく出し入れすれば、子どもはより一層目を開いて体をくねらせた。  引き抜くたびにこつこつとした突起に擦られ、きゅっと締め上げてくる内部は非常に刺激が強く、性的快感を強く感じられる穴だ。  今は狭くて少々動きづらいが、ロイズの言う通り回数を重ねればそれなりの具合になるだろう。エミーとロイズが唸った理由もそれなりに理解した。  狭いくせに、入れれば入れるほど深く入る。内部の温かさも絡みつきも申し分ない。小さくて男性器も併せ持つ異常な体のくせに、膣道の長さも奥の子宮口の狭さもなかなかに具合がいい。  バカにしていた手前認めたくはないが、十分当たりの部類に入るだろう。 「どうですか? 案外いいでしょう」 「……及第点だな」 「あー、俺も挿れたいなあ」 「エミーお前よ、ついさっき挿れたばっかだろうが」 「若いからレオよりも性欲も満タンなんですう」 「二つしか違わねえだろうがよ!」  いつもの如くアホらしい言い合いを重ねる男たちを放置して、子どもに圧し掛かる。捩じり込むように腰を押し付け、ずぶぶぶと深くまで沈ませてゆく。  しっとりと包み込んでくる中の熱さににそろそろ限界が来そうだった。  ずちゅずちゅずちゅと体液が混じり合う水音に煽られてさらに腰が早くなる。赤黒い大人の性器が小さな穴を広げてゆく様は、背徳的で確かに婬猥だった。  それについ先ほどまで何者にも蹂躙されていなかった未熟な身体を割り裂くという事に一種の興奮のようなものを覚えていることは否定できない。ピンと力の入った子どもの腿に細い筋が浮かび上がり、なんとなく指を這わす。  無垢な存在を汚す悦びは、男なら誰しも持っているものだ。 「ん、ん、ふ、ぅ、ぐ」  ガクガクとなすすべなく揺さぶられている子どもの、赤色の瞳からころりと透明な雫が落ちた。それに気づいたのはソンリェンだけだっただろう。  激しい揺さぶりを止めることなく、本当に一瞬、初めて、子どもと目が合った。  淀んでいるのにぴかぴかと輝く瞳がソンリェンを射抜く。  まるで途方もなく澄んだ赤いガラス玉のようだ。  最下層の移民の血が色濃く敬遠する色だというのに、目が離せなくなった。  なんとなく、言葉にし難い感覚に急かされた。  ひと際乱暴に、細い子どもの腰を抱え直し絶頂へ向かうためラストスパートをかける。子どもの顔の横に両手をついて、ひたすら快楽を追う行為に没頭する。  子どもは完全に、ソンリェンの精を吐き出すためだけの穴だった。  内部の締め付けが、今まで以上にキツくなる。食い千切られてしまいそうな狭さはソンリェンを誘っているかのようだ。皺をよせ、一層強く腰を叩きつけ勢いよく吐精する。 「ん、んん、……うッ!!」 「く……」  ここ最近忙しく久しぶりだったため、自分で思っていたよりも放出が長かった。  きゅっとしまった穴に搾り取られてるような感覚に陥り、その熱い内部に促されるまま爆ぜた解放感に身を委ねる。  緩慢な動作で何度か腰を叩きつけ、一滴も残さず子どもの膣内に残液を注ぎ込む。全部出し切り、身体から力が抜けた。  前髪をかきあげて大きく息をつく。珍しく生え際に汗が滲んでいた。用は終わったので子どもへの負担など考えずにずるりと一気に引き抜く。 「ぁッ……ぁああ、あ」  びくびくと戦慄く子どもの熟れた穴から、こぽりと溢れた白濁液が褐色の肌とシーツに垂れて目が逸らせなくなった。  茶黒と白のコントラストがこれほどまでに淫猥に見えるとは知らなかった。  ソンリェンにとってセックスとは、日常に付随する大したことのない行為の一つだった。  眠くなれば眠り、食欲がわけば食事をとり、性欲が湧けば女を抱く。それ以上でもそれ以下でもない。大して興奮することもなく淡々とこなすのみだ。  だからたった一度のセックスで汗をかくなんて久しぶりだった。 「うわっ、ぬるぬる……んだよ、なんだかんだ言って結構な量出してんじゃねえか」 「その分てめえも出しゃいいだろうが、自信ねえのか」 「いってろよ」 「あ、ソンリェン。どうぞ、使います?」 「ああ」  ソンリェンの綺麗好きをよく知っている用意のいいロイズに手早くティッシュを手渡されたので、白濁と血で汚れた肉欲を拭い、ゴミ箱に捨てる。  下着を履き直してベルトを締め、さっさと花鳥柄の薄い羽織を肩に下げ、背を向けてその場を離れた。 「ソンリェン、いってらっしゃーい」 「あ、終わったら戻ってきますか?」 「気分次第だ」 「んじゃ、それまでいい具合にしといてやるよ」  ちらりと肩越しに振り返れば、復活したらしいエミーが子どもの顔を引っ掴み逆さまにし、開かせた口に男根を突っ込み腰を振り始めていた。  そしてレオも、待ってましたとばかりに子どもの両足を開かせて腰を突き入れた。バタバタと宙を蹴っていた子どもの足指がピィンっと伸びる。  身を切り裂くような細い悲鳴は、青年たちの笑い声に掻き消された。  ソンリェンは扉を閉め、一気に静まり返った長い廊下を歩き始めた。ついさっきまで犯していた子どもの存在は直ぐに忘れた。  なにせそれ以上に面倒臭いことが待っているのだ。  待たせている御令嬢が優雅に紅茶でも啜っているであろう客室へと向かう足は、面倒くさげにたらたらとしていた。

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