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過去──58.*
今だってそうだ。
痛くて苦しいくせに、それでも感じている身体を恥じるようにトイは体を震わせて声を圧し殺している。その惨めな姿に嗜虐心がむくむくと湧きあがってくる。
これは穴だ。人権も何もかもをここにいる人間に掌握された消費されるだけの玩具。自分の残忍な加虐性をいくらぶつけても誰も文句を言わない自慰の道具。
もっとこの幼い身体を蹂躙し、いたぶり尽くしたいと強く思った。
「何度も言ってんだろうが、もっと締めろ」
「あぅっ……!」
後ろからトイの長い髪を引っ掴む。ぶちぶちと抜ける感触がしたがさらに力を込める。
急に引っ張りあげられて悲鳴を零す玩具なんて意にも介さず、内壁を抉る動きに合わせて手綱のように髪を揺さぶる。トイの褐色の項がどんどんと赤く色づいていく。
「抜きづれえって言ってんだろ、もっと腰振れ」
「ひっ……いた、ぁうっ」
形をなぞる様に耳に唇をつけ、耳朶に息を吹き込んでやるとトイが逃げるように身を捩った。玩具のくせにとムカついて、さらに髪を掴んで引っ張る。
「うるせえよ、性欲処理の便器風情が抵抗してんじゃねえ」
「ぁ、あ」
仰け反ったトイの赤い瞳が遠い天井を見上げた。まるで遠い空に手を伸ばしているようだと思った。
この部屋に窓はない、逃げられでもしたら面倒だからだ。
それなのに2週間前トイは逃げようとした。他でもないソンリェンの部屋の窓から。
トイを部屋に呼びつけて、その前にちゃっちゃと一服をしようと席を外したその時だった。結局窓枠からはみ出したトイは、うまく木に飛び移ることもできずに2階からずり落ちた。
だが他の木や花壇がクッションになり酷い全身打撲だけで済み、動けなくなっていた時になんなく庭師に捕まり引き戻された。
他の3人よりは執拗にしてこない相手だから大丈夫だろうとでも思われていたのだろうか、それとも部屋の外に高い木が生えているため逃げられるかもしれないと判断されただろうか。どちらであったとしても、舐められていたことに変わりはない。
あの時の怒りをどう表現しようか、今回ばかりは懲罰室を使って懲らしめましょうかと提案してきたのはロイズだったが、誰よりもトイを鞭打ったのはソンリェンだった。
天井に吊るしたトイを鞭打ち、傷つけられていくトイの褐色の肌に苛立ちがさらに増し、何度も手を振り上げた。もっとも、その分他の奴らもトイを散々痛めつけたのだが。
怒りがある程度収まり、レオと休憩を挟んでいたソンリェンの前で、トイの爪を剥がしたのはロイズとエミーだった。
「痛っ、い、ぁ、そん、りぇ……ッ」
薄く開かれた唇から、真っ赤な舌が覗く。
唇を重ねたいとは思わない。昨日の昼にエミーがわざと床に零したスープを這いつくばって舐めさせられていた口だ。
しかし名前を呼ばれたことで2週間前の怒りが湧き上がり、衝動のまま後ろからトイの首に強く噛み付いた。
「ひ、ぐッ、ぅ」
獣のように歯を突き立てる。噛み付かれた痛みのためか、トイの中が今まで以上にキツくなった。首を噛むとトイの中はよく締まる。
髪を解放してやり、小さな双丘をぐいと開かせ叩きつけるように打ち付ける。
「ん、っんァ、あっ、あ!」
激しい水音と、激しく肉を打ち付ける音。のけ反りながら苦しみとどうしようもない悦楽に哭く子ども。甘さと苦痛が入り混じった絶叫と嬌声の歪さ。
最後に強く奥に捩じ込み、溜まった熱を弾けさせる。
「ああ……やッ、いだっ、ふ、くぁぁ……」
胎内に吐き出されているのを直に感じているのか、トイが突っ伏したシーツの上で悶える。何度か前後に腰を動かし、残っていた残液も全部吐き出してからずるりと抜き取る。
くたりとトイの体が弛緩した。トイの背に滲み始めた水滴はシャワーの湯ではなく汗だろう。浮き出た背中の骨の隙間に溜まった汗が、静かに零れ落ちていく。
風のような、か細く荒い息を零しながらびくびくと震える小さな身体を見下ろす。
シーツの上には真新しい白濁も散っていた。中に出されたことでトイも達したのだろう。
「勝手に出してんじゃねえよ」
「ご、め……なさ、い、ごめ」
「どんな仕置きがいい」
「……っ、う、ぅ」
抜けたことで手に絡まっていた数本の髪を忌々し気にシーツに散らす。
激しい交わりに乱れた赤茶色の髪を一房手に取り、ソンリェンの噛み痕しか残っていない肌の一か所に灰皿に置いたまだ火が消えていない煙草の先を押し付けた。
じゅわ、と鈍い音を立てて褐色の肌が焼かれる。
「ひ、……」
突然の鋭い痛みに振り返ろうとした頭を押さえつけて、よりいっそうぐり、と刻み付ける。
「ぁ゛ッ……あ」
トイはシーツを噛みしめて熱される痛みに耐えていた。数秒押し付けて上がる煙が消えたので、煙草を離す。薄っすらと赤い円が褐色の肌から滲みだした。そのうちここも黄色く盛り上がるだろう。背中に刻み込まれた他の傷跡と同じように。
「……汚ねえ身体だな」
ぽいと吸殻を捨てる。
シーツが黒く滲んでいた。顔を埋めているトイが泣いているのだ。みっともなく鼻水を垂らし、大きく見開かれた夕暮れの太陽のような瞳には昏い影が落とされていることだろう。
「この痣、一生消えねえだろうな」
先ほど煙草を押し付けた首ではなく、するりと未だ完治していない背中の痕を撫ぜる。痛めつけるためではなく、知らしめるために。
誰よりもソンリェンが多く傷つけたこの細い背の傷を、忘れさせないために。
「もう逃げようなんて考えるなよ。こんな汚れ切った身体じゃ誰もてめえなんて助けねえよ」
背を丸めて静かに泣き出したトイを放置し、ずり下がった下着とズボンを履きさっさと身なりを整えて部屋を後にした。
用は済んだ。歪んだ高揚感を吐き出した後はいつも心は冷え冷えとしている。
「……、……ふッ」
扉を閉じようとした瞬間トイの堪えきれない嗚咽が聞こえてきたが、どうでもよかった。
トイの泣き声は犯している間はそれなりに嗜虐心をそそられるが、それ以外の時は耳に煩いだけだ。他の女たちにはさほど感じない鬱陶しささえも湧きあがってくる。
時折酷く苛立って口を塞ぎながら犯すこともあった。
ばたんと閉め、部屋に戻る。
さっさとシャワーを浴びてトイに触れた身体を洗い流したいと思った。
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