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残された時間 01

ーーーー色葉くんが事故に遭った。  色葉くんの姉の椿さんから連絡があって急いで向かった病室。色葉くんは色んな管に繋がれていて、“生きている”というより“生かされている”という状態に見える。  ベッドの周りには色葉くんのご両親や、兄弟、椿さんの旦那さんの颯斗さん、色葉くんの友達など、沢山の人がいた。  ベッドに近寄り、色葉くんの左手を強く両手で包む。  まだ温かい。色葉くんは生きている。 「色葉くん。」 「……。」 「いろ……。」 「……。」  どんな状態であれ、色葉くんは生きているはずなのに、呼びかけても答えてくれない。当たり前なんだけど、信じたくない。いつもみたいに、「なあに。」と可愛い笑顔で返事をしてほしいのに。  周りの人を気にしないで、色葉くんに声を掛け続けた。何度も何度も。  そんな僕に、椿さんが口を開いた。 「色葉ね、危ないんだって。このまま助からんかもしれん。」  ずっと僕と一緒に笑ってくれると思っていた彼の状態に絶望して、僕は崩れ落ちた。 「う、そ……。嘘ですよね……?」 「ほん、とうよ。本当なの。」 「嘘だ……。ねえ、色葉くん……。色葉くん……っ!」  返事をしてよ。「ひかさん、冗談だよ。」と起き上がってよ。  ぽたぽたと色葉くんの手と、握っている手に涙が伝い、ベッドが濡れていく。 ーーーーどうして……どうして色葉くんなんだ……っ!  今朝だっていつものように一緒に起きて、朝食を食べて一緒に家を出た。だから今日もいつものように帰宅したら色葉くんがいて、色葉くんの作ったご飯を一緒に食べて、寝るはずだったのに。  絶望で動けない僕をそのままに、夜も遅いということもあって、皆帰っていった。  僕と色葉くんだけになった病室は、色葉くんが生きているという心電図モニターの音と、僕の鼻を啜る音だけが寂しく鳴り響いていた。

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