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残された時間 02

ーーーーどうか、どうかお願いします。僕の何をあげてもいいから、色葉くんを助けてください。神様でも、悪魔でも、天使でも誰でもいい。この願いを叶えてください。 『ひーかーさーん!デートしよ!』 『光さん好きだよ。』  色葉くんから温もりがなくならないように、手を離すことなく握り続けていた。  僕はそのまま眠ってしまっていたが、ふと誰かの気配を感じて目を覚ました。はっと色葉くんの顔を見るとまだ眠っていた。まだ色葉くんには温もりがある。  それならば、誰がいるんだ?  ホラーは苦手ではない。よく色葉くんと観ていたし。だけれど何故か振り向けなかった。だから、僕は振り向かないで問いかけることにした。 「だ、れ……ですか。」 「誰でも良いだろう。お前は誰でもいいから其れを助けてくれと願った。俺にはそれが聞こえたから来たのだ。」  返ってきた声は不機嫌そうに低く、でもどこか優しさを含んでいる男性の声だった。   「そうですね。あなたは僕の願いを叶えてくれるんですか?」 「なんだ。怖がらないのか。」  “何か”は僕の怖がらなさに鼻で笑った。  怖がるわけがない。  確かに人間ではない“何か”ではあるだろうけれど、本当に色葉くんを助けてくれるなら誰でも良い。だから落ち着いていられる。 「怖がりませんよ。」 「それ程、其れを助けたいということか。」 「はい。」 「俺が何を求めてもか?」 「構いません。」  はっきりと答えると、“何か”は少し悩むように「うーん。」と唸り始めた。  暫く“何か”は悩み続け、どのくらい経ったかは分からないが、「これにするか。」と呟いたから、僕は深呼吸をして、“何か”の言葉を待った。 「俺が求めるのは、お前の視覚・聴覚・触覚・其れに関する記憶だ。まあ、俺も鬼ではない。その内の一つだけをお前に残そう。他の三つはお前から奪う。」  要求されたものは、重いような軽いようなよく分からないものに感じた。しかし、色葉くんの命がそれらより大事だと思える。 「其れは持って明日の日付が変わる頃までだろう。それまでに決めろ。決まったら心でも声に出してもいい。俺を呼べ。名はセキという。」  セキがそう言うと、スッと気配が消えた。  早いのかもしれないけど、視覚・聴覚・触覚・色葉くんに関する記憶……どれを残すかは既に決まっていた。

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