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残された時間 03
色葉くんに残された時間は分かった。だから、一先ずは安心していい。
「色葉くん、待っててね。」
僕が君を助けるよ。
もし色葉くんを助けられたとしても、僕には何も分からない。だけど、君には生きていて欲しいから僕はセキに三つのものを捧げよう。
涙を拭い、ベッドで眠る色葉くんをしっかり見つめてから、病室を後にした。
病院からの帰り、椿さんから連絡が来た時のことを思い出していた。
『色葉が飲酒運転の車とぶつかったの!今すぐ病院に来て……っ!!』
残業中、そう椿さんから連絡が来た時は心臓が止まりそうだった。悪夢でも見ているのか疑ったくらい。
頭の中が真っ白になった。それから震え始めて、震える手で何とか病院と病室をメモした。
そして帰る準備をしているとき、作成していた資料を間違えて消去しかけた。兎に角、何も考えることが出来なくて、涙が出てきた。それを見た上司が色々してくれたおかげで、病院に向かうことが出来たんだ。
色葉くんはとても危ない状態にまでなったのに、運転手は無傷で気を失っただけ。
それを病室の前で話している人がいて、偶々耳に入った。だからそれを聞いたときは元々沸いていた運転手への殺意が更に強くなった。
でもそいつのために犯罪者になるつもりはない。馬鹿らしいとさえ思う。それでもこの運転手に対する怒りをどうすればいいのかが分からない。
「耐えるしかないのかな。」
……少しの辛抱。何も問題を起こしては駄目だ。
取り敢えずこの時間は無駄。色葉くんとの思い出を振り返ろう。その方が有意義なんだと思うことにした。
家に帰り着き、シャワーを浴びてから、手紙を書き始めた。それは色葉くんに宛てたもの。
折角目が覚めたのに、何故か僕が三つも失った状態でいたら驚くと思うから、セキとのやり取りを全て書くことにした。
震える手を押さえつけて、時間を掛けてゆっくり書いた。そして最後に卑怯な言葉を付け加えて、手紙を封筒に入れた。
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