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失ったもの 01
『光さん お は よ う !』
目の前に出されているスケッチブックを見て微笑み、側にあったペンで『おはよう 色葉くん』とそれに書いて返事をした。
『変な感じがするところはない?』
『ないよ』
『それならよかった!』
『ありがとう』
僕が起きて体調チェックをする。これが毎朝の恒例行事。色葉くんは僕の体調をよく気遣ってくれる。
それが嬉しいような申し訳ないような感じがする。
僕は目の前にいる七瀬色葉くんという男性と同棲している。彼は僕の恋人らしい。そう、彼宛の僕の手紙に書いてあった。
僕はある日目が覚めると、聴覚、触覚を失っていた。序に何故か彼の記憶だけ全てなかった。
目が覚めた時、一番に飛び込んできたのは女の子みたいに可愛い顔をした男性……今一緒に住んでいる色葉くんの泣き顔だった。
僕にとって彼は知らない人でそんな人が泣いているのも意味が分からないし、何か訴えかけられているはずなのに何も聞こえないのも意味が分からない。しかも確かに僕の手は握られているはずなのに温もり以外何も感じなくて意味が分からなかった。
僕は頭が現状を理解できず、逆に冷静になった。
色々と検査され、原因は分からないけど、聴覚と触覚を失っていることが分かった。
そして色葉くんのことは頭を打ったわけではないらしいのに忘れていて、それなのに戻るかすらも怪しいらしい。
それらを知った僕はこれからの生活はどうするか、仕事はどうするかを考えていた。
記憶については色葉くんに騙されているかもしれないと頭を過った。だけれど検査が終わってから、僕が色葉くんに書いたという手紙を見せてくれて、それは否定された。そして自分の身に起きていることの理由を知った。
まるでファンタジーの世界にいるような感じがする。
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