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残された時間 06
「そんなの色葉くんのためならくれてあげます。」
僕は後ろを振り返って、笑顔でそう言い切った。
これは自己満足。色葉くんにも他の人にも迷惑をかける。それが分かっているけれど、それをしないと助からないから。
セキは人間離れの綺麗な顔を悲しそうに歪めて「分かったよ。」と呟いた。
「ではお前はあれの所に戻れ。もう一目見せてから頂くことにする。」
「セキって優しいんですね。」
「ははっ。そんなこと初めて言われた。皆、『非道だ。』と泣き喚くからな。」
「僕もそうですよ。でも色葉くんを助けてくれるからいいんです。」
僕の他にもこういうことをしてもらう人がいるんだな。やっぱり自分の何かを渡して叶うものがあれば渡してしまうのが人間なのか。みんな、何のために何を差し出したのだろう。
……ってそんなこと僕には関係ないか。
そんなことを思っていると、セキは少し何かを考えてから、表情を少し和らげた。
「ふうん。少し気分がいい。気紛れだが、お前にある贈り物をしよう。この記憶も消してしまうが、あれと依存ではなく純粋に愛し、生涯の番であると互いに思った時に受け取れるようにする。」
「ふふ。やっぱり優しいです。」
僕の言葉に、セキは照れくさそうに自分の頭を搔きながら、「俺の気が変わる前に出ていけ。」と退出を促した。
だから「ありがとうございます。」と頭を下げて、トイレを出た。
寝ていた部屋に戻ると誰もいなかったから色葉くんのいる病室に向かうと、いつの間にか入れるようになっていて、みんなで色葉くんを囲んでいた。
僕が入ってきたことに気付くと、色葉くんのご両親が「こっちに来なさい。」と色葉くんの傍を開けてくれた。こんな時、本当はご両親の方が見ていたいはずなのに。
どう、何回見てもやっぱり色葉くんは‟生かされる”という状態のまま。
色葉くんの頬に手を添えて生きていることをきちんと感じて安心していると、突然膝から崩れ落ちた。
「光くん?!」
意識が朦朧としてきて、誰かが僕を呼んだのが聞こえたけれど反応できない。だけれど、ただ色葉くんのことを思うことだけは出来る。
ありがとう。色葉くん愛してるよ。……またね。
僕はそのまま気を失った。
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