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残された時間 05
泣きながら話しかけているうちに、いつの間にか僕は眠っていたらしい。目が覚めるとベッドにいた。色葉くんの病室じゃない。
ここには色葉くん以外の昨日いた人たちがいて、みんなの表情がとても暗い。
色葉くんに何かあった……?
目覚めた僕に気づいた椿さんが涙を堪えながら口を開いた。
「光くん起きたとね……。つい一時間くらい前に色葉の容体が急変したとよ。日付が変わるまで持つか分からんとだって。」
セキが言っていた時間だ……。
それはセキのいうことは嘘ではなく、僕が三つのものを失って色葉くんを助けないと、本当に色葉くんは死んでしまうということの証明になった。反対に、三つのものを捧げたら色葉くんが助かるということの証明にもなる。
「そ、うですか……。すみません、今は何時ですか?」
「20時よ。」
「ありがとうございます。」
大丈夫。色葉くんは僕が助けられる。
椿さんに「色葉くんが目を覚ましたら渡してください。」と手紙を渡した。良く分かっていなさそうだったけど、あまり突っ込まれても困るから、急いでトイレへと向かった。
個室に入る。幸い誰もトイレにいなくて助かった。
「セキ」
声に出して呼ぶと「漸く決まったか。」と後ろから声が聞こえた。
「決まりましたよ。視覚を残します。」
「ふうん。それは何故だ?」
「言う必要ありますか?」
「どうせ分かっているんでしょう?」と心の中で呟くと、セキは「まあな。」と笑った。
セキは僕の頭の中を見ることが出来る。多分離れていても。だから僕が昨日セキと別れてから何をしたかもお見通しだ。
因みに言うと僕が視覚を残す理由は、目で見えていれば最悪一人でも何とか生活できると思ったから。
「後悔しないか?」
「しません。」
「そうか。……お前は次第に眠りにつく。次に目が覚めたら、あれの記憶はない。それに何も聞こえなくなっているし、触られる感覚もなくなっている。最後にもう一度聞く。あれの為にそれらを失って後悔しないか?」
さっさと失わせればいいものを。三つも失わせるくせに優しすぎる。
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