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第27話
「源の手から生み出されるものすべてに、俺は魅了されました。もっと知りたいと思った。それで、源の絵がもっと世の中の人に知ってもらえたらいいのにと思った」
源は確かに一緒にいて楽な人間ではないし、厭世的で人間嫌いで、面倒くさいときもある。しかしその源が誰よりも美しい絵を描く。
去年のちょうどいまごろ、源の絵がある本の表紙に使われた。もともと源の作品の熱烈なファンである作家側の要望から生まれた話と聞くが、それを実現させたのは花園画廊の担当者だという話を聞いたとき、篤郎は喉の奥にスポンジを詰め込まれたみたいに胸が苦しくなった。
悔しいけど、あの男はきっと誰よりも日高源という作家の魅力を理解している。それだけでなく、仕事として源の絵に関わることができる。それに比べて、ただの傍観者にしかすぎない自分は、指を咥えて見ていることしかできないのだ。
自分だったらよかったのに。源の一番近い場所にいるのが、あいつなんかじゃなくて自分だったら……。
「そうか、きみは日下くんが羨ましいんだね」
「え?」
「そうじゃないのかい? 彼はきみの言うように、日高くんの作品を世間に広めることができる。誰よりも近くで、その世界観を共有できる。きみも日下くんのようになりたいんじゃないのかな?」
俺があいつのようになりたい? あいつのことが羨ましい? 源とそういう関係だからというのじゃなくて、あいつのようになりたいと?
ーー自分だったらよかったのに。
さっき考えたばかりの思いが甦る。同時に、自分がこれまで日下に対して行ってきた一方的な態度を思い出して、篤郎はかあっと赤くなった。
うわー、まじで? 俺って超恥ずかしいやつじゃん。
「だとしたら、きょうの日高くんの絵をきみはどう見るのか楽しみですね」
え?
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