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第55話
とろけるようなキスをしながら、気がついたら布団に横たえられていた。自分の身体のどこがそんなに面白いのだろうと思うくらい、源の手は執拗に篤郎の身体に触れた。薄闇の中で、情欲に濡れた源の目が光る。ぞくっと肌が震えた。篤郎は、自分がまるで獲物にでもなった気がした。腹を空かせた源という一匹の獣の前に投げ出された獲物に。
「ひぁっ!」
敏感になっていた胸の頂に源の指が触れ、篤郎はびくっとした。思わずおかしな声を出してしまったことが恥ずかしくて、全身が熱くなる。
「そ、そんなとこいいから! 源!」
源の身体を押しのけようとした腕をひとくくりにまとめられて、頭の上に持っていかれる。腕の内側にチリッと微かな痛みが走った。確信犯的な笑みを浮かべる源と目が合ったとき、篤郎はわざと痕をつけられたことを知った。ぱくぱくと口を開閉させる篤郎に、何が楽しいのか源がにやりと笑った。
「あつ、エロい。恥ずかしがって、かわいいのな」
かあっと羞恥が全身に広がる。
「アホか!」
思わず蹴り出した右足を軽く避けた源に掴まれた。全裸の篤郎はすごい格好を源に晒していることになる。篤郎は真っ赤になった。
「ば、ばかっ! 目が腐ってるんじゃないのか……っ!」
離せと脚をじたばたさせるが、押さえ込む源の力のほうが上だった。ふくらはぎをするりと撫でられ、篤郎はびくんとなった。
「ーーどうして? しなやかな筋肉がついた身体も、うっすらと日焼け跡が残った肌も、どこもかしこもエロくてうまそうなのに」
ぞくぞくするほど甘く情欲に滲んだ目で見つめられて、持ち上げられた太股の内側に口づけられる。篤郎は股間を押さえると、「ぎゃっ」と色気のない声を上げた。篤郎の声に、一瞬目をまん丸くさせた源は固まると、次の瞬間吹き出した。くつくつと楽しそうに笑う源を、篤郎は情けない気持ちで眺める。
「……悪かったな。色気がなくて」
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