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プロローグ

トイレから出てきた(みのる)の顔は神妙な面持ちそのものだった。   片手には尿中に含まれるhCG(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン)を調べるためのキット、所謂妊娠検査キットを握りしめている。   「はぁ…また陰性だった」  穂はため息まじりに呟くと、ポケットからのろのろとスマホを取り出す。 そして、見慣れたキットをカメラにおさめた。 『○月○日 今日の結果です』 いつものように簡素な結果報告だけを送ろうとして思いとどまる。   逡巡の後、 『不甲斐なくてすみません』 という一言添えて相手にメッセージを送信した。   すると数秒も経たないうちに、相手からメッセージが届く。   穂は恐る恐るメッセージを開いた。   すると、そこには『来週また行くよ』の一言。 その何気ないただの普通の一文に穂の肌は粟立ち、下腹の底に甘い疼きを感じてしまったのだった。

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