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第1話

穂と義父である尾村清司(おむらせいじ)の歪な関係が始まったのは約一年前。 年末、義母が突然友人たちと旅行に行く事になり、一人になる義父と一緒に年を越してほしいと頼まれたのがきっかけだった。 夫の清高(きよたか)はツアーコンダクターという仕事柄、年末年始は繁盛期で家にはいない。 一人きりで年末を過ごす予定だった穂に断る理由などはなかった。 しかしそれまであまり義親と交流がなかった穂は義父と二人きりになる事に些か不安があった。 自分は男で、嫁と呼ぶにはあまりにも可愛らしさからかけ離れている。 結婚を了承してくれたとはいえ、どんな風に義父と接すればいいかわからなかったのだ。 しかしそんな心配はすぐに払拭された。 元自衛官の義父は正義感が強く、優しく、そしてとても紳士的だった。 男の嫁という穂を邪険に扱ったりはしなかったし、とても良くしてくれたのだ。 だがその日の夜、義父に付き合って酒を口にした穂はうっかり酔い潰れてしまった。 そして、目覚めた穗の身に起こっていたのは夫には決して言えないような事だった。 彼はあろうことか、穂を抱いたのだ。 しかもその理由が更に驚くべきものだった。 『孫がほしい』 つまり、穂を孕ませたいがために抱いたのだ。 世界のどこかではあるのかも知れないが、穂の知る限りこの国で男性が妊娠したという話は聞いた事がない。 そもそも穂の肉体は男。 たとえ精子を注がれても懐妊することはまず不可能だ。 だが、義父ははっきりと言った。 穂の中には子宮が存在する。そう強く思っていれば必ず子は宿るのだ、と… 狂っている。 普通は誰もがそう思うだろう。 穂自身もはじめはそう思っていた。 紳士だと思っていた義父に陵辱紛いの行為を受け、とてもショックだった。 だがその一途なまでに穂の懐妊を願う義父の姿勢に、次第に穂の心も身体も懐柔されていっている。 いや、本音をいえば留守にしがちな夫の代わりに肉欲を満たしてくれる義父という存在に依存しているのだ。 夫の留守のたびに義父と交わるその行為に、罪悪感を感じながらも溺れている。 その自覚は確かにあった。 彼のテクニックは凄まじく、穂は毎回意識を飛ばすほど快楽を感じている。 それこそ女性だったら間違いなく妊娠しているほどに。

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