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第1話

一つ話をしよう そう…それは今日みたいな寒い聖夜のこと―― 『……』 動くことも声を出すことすら鬱陶しくて歩道の片隅に座り込む。呑み過ぎた酒が外気とは正反対に身体を熱くさせ、思考を奪っていく。 冬は嫌いだ 寒いしすぐに暗くなる けどもっと嫌なのは…この派手なイルミネーションとここぞとばかりに引っ付く男女の群れ。チカチカイチャイチャ…目障りだ。 10日前3年付き合っていた彼女に振られ、4日前母親に何度目かの結婚と孫の催促をされ、今日会社を退職させられた。 いっそこのまま眠ってしまおうか… 手に持っていた酒を煽る。 確かに彼女に割く時間は少なかったが、それなりに大事にしてきたつもりだ プレゼントもデートも考えた結果が、(貴方との結婚後が想像できないから別れて欲しい) 意味が分からない (部下のミスの責任を取るのが上司の役目だ) そう俺に言った上司は自分のミスを俺に擦り付けた。 あぁ…本気で眠くなってきた… うつむく視線の片隅に映る運動靴と耳に心地いい柔らかい声。 それを最後に俺の意識は落ちていった。

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