1 / 7
第1話
一つ話をしよう
そう…それは今日みたいな寒い聖夜のこと――
『……』
動くことも声を出すことすら鬱陶しくて歩道の片隅に座り込む。呑み過ぎた酒が外気とは正反対に身体を熱くさせ、思考を奪っていく。
冬は嫌いだ 寒いしすぐに暗くなる
けどもっと嫌なのは…この派手なイルミネーションとここぞとばかりに引っ付く男女の群れ。チカチカイチャイチャ…目障りだ。
10日前3年付き合っていた彼女に振られ、4日前母親に何度目かの結婚と孫の催促をされ、今日会社を退職させられた。
いっそこのまま眠ってしまおうか…
手に持っていた酒を煽る。
確かに彼女に割く時間は少なかったが、それなりに大事にしてきたつもりだ
プレゼントもデートも考えた結果が、(貴方との結婚後が想像できないから別れて欲しい) 意味が分からない
(部下のミスの責任を取るのが上司の役目だ)
そう俺に言った上司は自分のミスを俺に擦り付けた。
あぁ…本気で眠くなってきた…
うつむく視線の片隅に映る運動靴と耳に心地いい柔らかい声。
それを最後に俺の意識は落ちていった。
ともだちにシェアしよう!