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第2話

全身を包む温もりに、瞼をあげる。 カーテン越しに射し込む明りに焦り飛び起きるが、退職した嫌な事思い出し力の抜けた体でベッドに座り込む。 重たい頭を擦りながら水を求めて手元を探るが、普段そこにあるはずのペットボトルもそれを置く棚も見当たらない。それどころか…  よくよく辺りを見回せば見覚えのない部屋だ。きちんと整理されたシンプルな部屋だが、どこか幼さの残る印象を受ける。 ここに来るまでの記憶をぼんやりと探していると部屋の外から突然聞こえてきた泣き声に心臓が跳ねた。 扉の先にいたのは腕で包み込むように抱き、赤ん坊をあやす女性の姿だった。 『あら、ごめんなさい 起こしちゃいました? 気分はどうですか?』 そして彼女の弟が俺を見つけ助けてくれた事を教えてくれた。 その弟は仕事中である事、シングルマザーの彼女と弟の3人で暮らしている事。息子の父親になるはずだった元カレへの愚痴や、朝俺が仕事を辞めた事を寝ぼけながら答えた事まで… 話し相手が欲しかったという彼女に付き合うこと数時間、気づけば日が暮れはじめ、彼女の弟が帰ってきた。 『体の具合は大丈夫ですか?』 まるで性格が声や容貌に滲み出たような優しそうな青年だった。 まだ高校生と言われても違和感のない彼は社会人二年目の保育士だという。 どうりでと、さっき感じた部屋の違和感の正体に納得した。 男物の上着をかけたシンプルな部屋に置かれた折り紙などのカラフルな用具達が幼い印象にさせていたのか 『すみません 助けていただいたばかりか、長居まで…』 改めてお礼を言いつつ、もう帰ると席を立った俺を弟が引き留めた。 『あの、長居ついでに夕食もどうですか?大したものは作れませんが』 『いえ、そこまでお世話になるわけには…』 『いいじゃない 弟の料理は絶品よ』 「それで? ごはんいっしょにたべたの?」 「あぁ とても温かくておいしいご飯をね どうやら弟は男の事を心配しての食事の誘いだったんだ」 「なんで?」 「寒い夜にお酒を飲んで外で寝るのは…、体にとっても悪いからね また同じ事をするかもって思ったのかな」 「それで?それで?」 「あぁ、男は自分の家に戻ったけど、その姉弟とはご縁があってね、何度か会ううちに仲良くなったんだ」 「ごえん? あ!じんじゃでおててパンパン!」 「フフッ それとは少し違うかな う~ん…これが所謂運命の出会いってやつかな」 「はわわぁ~!」

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