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勇者は魔王になる
6. 勇者は魔王になる
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「ゆっくり、して」
「リッツはいつも、俺の言うことを聞いてくれない」、そう頬を膨らませる様子がかわいらしい。
「っ、大きくしないで!」
「そんな無理を言わないで下さい。愛しています、ジル様」
「あっ、あっ」
細い腰を抱き、中に自身を打ち付ける。その度に、ジル様は、身体を真っ赤にし、甲高い声をあげる。
何度抱いても慣れない様子で、「熱い熱い」と言いながら俺に泣きながらすがりついてくる。その熱いのが好きなくせに、口では嫌だのもっとゆっくりだの、俺を焦らす。
「リッツ、リッツ、」
「はい、ジル様」
「ぎゅ、ぎゅってして」
ああくそう。ここ2年で俺の身体は更に大きくたくましくなった。対して、ジル様は変わらない。15歳の姿のままだ。いや、最近うれしいことに、「少し身長が伸びた」と喜んでいたか。早く、俺の成長に追いついてくれないと、このまま壊してしまいそうになる。
ジル様のご要望に応えるべく、その華奢な身体をすっぽり抱きしめる。
「あっ」
腹に暖かいものがかかる。どうやらジル様が達したらしい。荒い息をしきりに繰り返している。ええええ。
「リッツ、もう、や、やだ。疲れた。ああっ」
「そんなことを言わないで下さい。もう少し、俺のために頑張れませんか?」
決して無理強いをしたいわけではない。嫌だと言われたらやめるつもりだ。ジル様の返答を待つ間も激しくは動かない。少しばかし、いいところに先を合わせて揺れるくらいはするが。
「あっ、ひ、どい」
「ジル様、もう少し」
「あっ、っ、リッツ、リッツ」
また、赤い瞳が欲情の色に染まっていく。その瞬間が好きだ。
「好き、リッツ、も、っと」
「はい」
許しが出たので、存分にその身体を味わうこととする。「好きだ」と言ってくれるようになったのは最近だ。それも最中のときだけなので、性行為の頻度が増えるのは仕方がないというか、ジル様のせいだと思う。
「俺も、愛しています」
小さな頭を抱え込み、中を穿つ。ジル様の2度目・・・・・・恐らくは2度目の絶頂とともに、俺もその温かくいやらしくうねる中へ放った。
***
平和だ。
魔王もいない。勇者もいない。人間と魔物が何の統率性もなくいがみ合っているだけの世界で森奥の屋敷で愛しい彼と2人きり、誰も手出しはできない、させない。
腕の中で寝息を立てる少年の頬を撫でる。こうも俺に心を許してくれ、うれしい。ありがたい。守りたい。
王城からの使者は度々ここを訪れ、時には攻撃を加えてくる。その中には力をもつ者も多くいた。
面倒だなあ。どうせ俺とジル様には敵わないのに。どうしてそんな真似をするんだろう。俺とジル様が人間界の中であろうとするとこうも障害が多いのか。
だとすれば、
「魔王になろうかな」
ジル様と2人、今とそう立場は変わらないのかもしれないが、俺たちが魔者側につくことで、今よりもわかりやすくなるんじゃないだろうか。
ジル様は未だ忘れられないらしいシィラに会えるし、シィラも喜ぶことだろう。魔王を失った魔物達は不安にしているという話も聞く。
それに、俺たちが存在し続けることで、第2、第3のジル様を出すことを防げるのではないだろうか。
俺たちに対抗するには、力を持つ人間か貴重で酷い扱いはできない。うん、そうだ。
「リッツ?」
まだ寝ぼけているあなたにこの提案をするのは気が引ける。だから、何でもないよと言うかわりに額に唇を落とした。
俺のかわいいかわいい魔王様、これからもずっと一緒だよ。
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