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第3話

「……お風呂、入ったんだよね……?」  寛也の言いたい事が直ぐに分かった。そう、もう準備は出来ているのかと確認されたのだ。  寛也を受け入れる準備をする、二人で風呂に入る時は寛也がしてくれるのだが、恥ずかしいのでなるべく自分でするようにしているのだ。  いや、自分の尻の穴に指を突っ込むのだって相当恥ずかしいが、寛也にされるよりは幾分かましだ。  だって可愛い、と連発してくるし、色だとか中がどんな具合だとか言ってくるし、もうホントに恥ずかしいのだ……。  ……ていうか、居た堪れないのだ……。 「優にゃん、かわいい……」 「え?」  自分の腕よりも太い足首を持ち上げ、そこにキスをする寛也。唖然としている隙にぐっと腰を掴まれ、腰を高く上げられてしまった。 「寛也?!」  まんぐり……いや、ちんぐり返し?なんだか蛙がひっくり返ったような、色々な所が丸見えの姿勢に焦ったが、そこに追い討ちを掛けるように、足の間から口角を持ち上げた寛也の顔が見えた。 「ちょ、待て……!」 「待てない、きれーにしてあるんだし、いいでしょ?」 「ひゃ……!」  がっちりと腰を掴んだまま、寛也はそこに舌を這わせた。既に慣らしてあるそこは歓迎するように寛也の舌を受け入れる。  柔らかさを確かめるように舌を差し入れ、寛也は満足そうに笑みを深めた。 「優にゃん、ねぇ、まだ分からない?」 「……ふ、わ、分からないって……言った、だろ……ひろ、もう……」  唾液を溜め、くちゅくちゅといやらしく音をたて舌を出し入れする。じんわりとした快感は拡がっても、決定的な快楽はない。  ずっと放置されている優輔自身が切なそうに涙を零す、それが糸を引き胸の方へ垂れてくる。 「優にゃん、賢いけど、はしたないね、涎が垂れてるよ、ほら……」  ほら、といって先走りを胸に擦り付ける。乳首を弄られる度に腰が揺れ、溢れた先走りがまた零れ落ちてくる。 「はぁ……寛也……もう、いいだろ……」 「ねぇ、ホントに分からない?」 「……あぁ……分からないよ」 「……そっかぁ……じゃあ、オレが足りない物をあげるね……」  がさごそと音がすると、寛也はローションを舐めていた秘所にとろりと垂らした。紙袋のような音はローションを取り出した音だったようだ。  垂らしたそこに指が入り込み、拡げるように器用な動きを見せる。寛也の指を無意識に締め付ける粘膜に再びローションを足すと、またがさごぞと音がした。 「……ひろ……」 「はい、優にゃん……これで優にゃんも立派猫になれるね」 「……え?!」  指が抜かれると、そこにはどぎついピンク色をした見たことのない物体が入り込もうとしていた。本物を見るのは初めてだが、多分、それは間違いなく大人の玩具というあれだ。 「寛也、待て、それは何だ?!」 「なんだ、ってーだから、ほら、優にゃんに足りないもの」  にこりと笑って寛也が見せたのは、ピンク色の先端に付いた黒色の長い……そう猫の尻尾だった。男性器を模したピンク色の玩具の先に猫の尻尾とは、随分とエグイ……寛也、お前それどんな顔して買ったんだよ……。 「尻尾ぉー?!」 「そうだよ、優にゃん、猫なのに尻尾ないなんておかしいでしょ?」 「ま、まて……うぁ……!」  ぐぐっと入ってきたそれは寛也のものと比べれば細いし短いが、尻尾との切り替えし近くについているスイッチに嫌な予感が襲う。  攪拌するようにして入れ込まれたそれは、ピンク色が消えればまるでそこから尻尾が生えているかのように見えなくもない。 「尻尾もかわいいね、そうだ、尻尾の生えた優にゃんの記念撮影もしなきゃね……」 「や、止めてくれ……!」 「止めないよぉ、うちの可愛い優にゃんを撮らないわけにはいかないでしょ~」  悪魔の笑みを浮かべた寛也は手を伸ばしスマートフォンを手にすると、制止の声も聞かずにシャッター音を響かせた。  「じゃあ、こっちからもね、動画で撮っちゃおうね」  足を下ろされうつ伏せにさせられる、漸く恥ずかしい姿勢から解放されたと思ったのも束の間。 「ほら、ヨガでもあるでしょ、猫のポーズ」 「……ひろ、やめ、てくれ……」  尻尾をピンと引っ張り、腰を高く上げさせられる。寛也は愛猫に対するような優しい手付で背中から腰、更に尻を撫でる。  さわさわとした感触がじれったく、埋められたものは微動すらしないので優輔の欲望は捌け口を失ったままだ。  振り返り寛也を見れば、愉しそうにスマホ片手に余裕の笑みだ。優輔は涙で濡れた瞳で懇願した。 「……なぁ、寛也、猫はもういいだろ……?」 「もういいって?優にゃんは猫さんでしょ?そっか、お尻が寂しいんだね、遊んであげるね」 「え?!ちょっと、ま……ぅああ……!」  スイッチオン。低い唸るような小さな音と共に尻の中の物が振動を始める。冷たい塊は中間と先端で別の動きを見せ、優輔を翻弄した。  寛也の手が尻から尻尾へと伸びる。中が蠢くたびに揺れる尻尾を引っ張り中の角度を変える、ぐちゃぐちゃと掻き混ぜられる内に先端が優輔の敏感な所に擦り付けられた。 「あぁぁ、ん、ひろ、やだ……これ、取って、くぅ……んん……ぁあ!」 「だめだよ、いーっぱい遊んであげるんだから」 「うぁあ……!」  カチリと音がして振動が変わる。強に合わされた玩具は凶悪な動きで優輔を攻め立てる。前立腺を激しく擦られ、肉壁のあらゆる所が波打つように攪拌され優輔の腰が切なげに揺れる。  腰の動きに合わせ肥大した優輔からはどくどくと先走りが溢れ、糸を引きラグにシミを作る。いつもだったら汚れるから、とベッド以外で始めても必ずタオルなどを用意してラグや床を汚さないように注意する優輔だが、今日はもうそんな余裕なかった。 「可愛い……やっぱり尻尾がないとね……きもちいー?」 「…や、やだ…あ、んんん…」 「どうしてそんなにイヤがるの?こんなに気持ちよさそうなのに」 「やだ……寛也じゃない……寛也がいい……」  うわ言のように繰り返す。涙なのか汗なのかどこから漏れているのか、顎からぽたりと伝い握った拳に筋を作り落ちた。  寛也にだったら何をされても我慢は出来る、でもこんな風に辱められるのは哀しい。セックスをするなら繋がりたい、満たされない心が悲鳴を上げる。 「……あ……はぁ……」  スイッチが切られると、優輔の中に押し入っていた冷たい塊は入ってきた時と同じように突然抜け出ていった。  後を振り返れば悄然とした表情の寛也が優輔を見下ろしていた。 「……ごめんね、優輔……」 「ひろ……」  まだ異物感はあったが、体を捻り寛也と向き合う。俯いたままの寛也の頬に手を添え上向かせる、潤んだ瞳が優輔をじっと見つめた。 「……僕も優輔を自慢したかった……ごめんね、何かムシャクシャしてて……」 「もういいよ、寛也……」 「……ごめんね……」  腕を伸ばし抱き寄せると、寛也は項垂れるようにしてその胸の中に入った。  ぐすっと鼻を啜る音は演技ではないだろう、本当に反省しているようで寛也は一向に顔を上げようとしない。  もういいから、そう思いを込め寛也の滑らかな髪を撫でる。金髪に近い茶色の髪からは整髪料と微かにタバコの匂いがした。 「寛也……続き……」 「……でも……」 「……オレ言ったよな……?寛也が欲しいって……」 「優輔……」  もう一度顎を掴み上向かせると、その瞳はしっとりと欲情に濡れていた。瞳を見つめれば、寛也は妖しく笑み自らの腕を伸ばし優輔に抱きついてきた。 「優輔……」  低く、甘く耳元で呼ばれると、さっきまでは感じ得なかった背徳的な喜びが背筋を駆け上がる。優にゃん、などと呼んでいた時とはまるで違う声音に優輔の萎えていた雄芯は瞬く間に力を取り戻す。  それを目敏く見つけ、寛也は愉しそうに笑う。 「……ベッド、いこっか……」  返事はそのまま寛也の唇に奪われた。 *** 「ところで、その尻尾はどうしたんだ?」 「これ?えっとね、買って来たんだー、こんど一緒に見に行く??色々売ってて楽しかったよ」 「……いや、遠慮しておく」 「そぉ?でも、猫耳とお揃いでいいでしょ?」 「……」  何がいいのかは分からなかったが、優輔はとりあえず笑って誤魔化した。肯定したら、別の玩具も買ってこられそうだったからだ。  玩具を抜き取られてからベッドへ移り2ラウンド。猫耳は途中から放置だったが、うっかりしたままやってしまった……仕方ない、寛也はかなり気に入っていたようだので良しとしよう。  腰がだるい、倦怠感に身を委ねていると眠気も出てきた。 「優輔、猫耳かわいかったけど……イヤだった……?」 「……嫌というか……ただ……」 「ただ?」 「可愛いとは思えないんだけど……」 「可愛いよ」 「……寛也がしたところ、見てみたい……店ではしたんだろ?オレも見たいな……」 「オレ?んー、いいけど、オレがしても可愛くないよ?」  優輔の頭から猫耳を取り上げると、寛也は自分の頭にセットした。可愛くないでしょ?と言いながらにゃんにゃん言ってポーズを取る。 「……優輔足りなかった?」 「……おま……それは反則だろ……」  可愛いだろうとは思っていたが、予想以上だ。しかもこれを店で見せていたのかと思うと、客やスタッフに嫉妬めいた思いまで起こる。複雑だ。  足りなかった訳ではなかったが、恋人の可愛らしい姿を見て反応してしまった優輔に笑みを深めると、寛也は猫耳姿のままで押し倒してきた。 「じゃあ、こんどは寛にゃんが可愛がってあげるね」 「……!」  鼻血が出そうだと思いながら、寛にゃんこと寛也の愛を再び受け入れる優輔だった。 完

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