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第82話
「誰でもなんて俺は求めていない。颯斗にだけ、言って欲しいんだ。どうせならば今度は、現実の俺との甘い夢――見てみないか?」
逞しい剛直を一度俺の浅い処まで引き抜くと、一気に貫く。
「一年の計は初夢にあり、って言うだろう?」
「違いま……っァっ……それは、元旦っ……あああっ」
グズグズに蕩けさせられた俺は、その後夢さえ見ないほど、新年早々抱き潰されたのであった。
「翔琉、起きてますか?」
不意に目を醒ました俺は、隣りに横たわる翔琉に声を掛ける。
「……何だ?」
「すっごく好きです。大好きです! ……おやすみなさい」
咄嗟に翔琉へ背を向け、俺は布団の中へ潜り込む。
もちろん翔琉がそれを見逃す訳はなく。
途端、腕の中に力いっぱい抱き締められてしまう。
「嬉しいから、俺が今からたくさんお年玉を上げよう」
真顔で告げた翔琉に嫌な予感を感じる。
「それって、まさか……」
早速昂った熱を俺の臀部の狭間へ充てがう。
「一年の計は初夢にあるって言うだろう?」
嬉々として告げた翔琉に、俺は「だからそれは、初夢じゃなくて元旦ですって!」と言い返しながらも、その熱を密かに待ち侘びていたのであった。
こうして俺たちはまた一年、愛し愛され、絆を深めていくのかもしれない。
初夢の中の俺のように、今年はもっと素直に翔琉に愛を伝えられたらな、なんて思いながら。
余談だがその後、冬休みを終えて久しぶりに大学の構内で花凛ちゃんと会った時のこと。
勧められたオメガバースについて感想を求められた俺は、例の初夢のこともあり罰が悪くなってしまい、適当に「楽しかったよ」などと当たり障りない感想を口にする。
すると性懲りも無く、今度は獣人αと男性ΩのBLを勧めてきたが、流石にもう夢に出るほどの影響は受けたくなかったので丁重にそれをお断りしたのであった。
END
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