3 / 15
自己紹介
「・・・で? お前の名前は?」
あまりにもユルい面接に面を食らい、ボーッとしている俺を不審に思ったのか心配に思ったのかはわからないが中年イケメン店長こと笠井 徹 さんはやんわりとした口調でそう自己紹介を求めてきてくれて、それに俺は『はい!』と返事を返し、自己紹介をはじめた。
「遠野 春海 です! 歳は18で彼女はいません! よろしくお願いします!」
俺はけっこうデカめの声でそう自己紹介をし、後ろからいきなり頭を(軽くではあるけれど)叩かれた。
その突然のできごとに俺は驚きつつ、後ろを振り返った。
振り返ったその先には不機嫌丸出しの細マッチョ系爽やかイケメンさんが立っていて俺をこれでもかと睨んできていた。
「・・・うるせぇ」
その細マッチョ系爽やかイケメンさんはドスの効いた低い声でそう言うと俺を品定めするかのように凝視し、その突然の凝視に俺は当然、たじろいだ。
「す、すみません」
小声でそう謝った俺を笑ったのは中年イケメン店長の笠井 さんだった。
「剛志 そう睨んでやるなよ。怖がってるだろ~? あ、あとそいつ、明日からここで働くから。指導のほどよろしく~」
中年イケメン店長の笠井 さんはそう言うとケラケラと笑い、壁に掛けられたハイセンスな掛け時計へと目を向け、俺は未だ俺を睨んできている剛志 さんに愛想よく微笑み掛けてみた。
だが、俺の渾身の微笑みは剛志 さんの盛大な舌打ちで悲しくも散り去った・・・。
「・・・仲良くな?」
そう助け船を出してくれたのは中年イケメン店長の笠井 さんだった。
しかし、中年イケメン店長の笠井 さんの言葉にも剛志 さんは何の返答も返さずに店を出て行ってしまった。
なんだか気まずいな・・・。
そう思うと同時に今度は頭をわしゃわしゃと撫でられ、それに驚いた俺は慌てて頭を上げ、俺の頭を撫でてきている中年イケメン店長の笠井 さんへと目を向けた。
中年イケメン店長の笠井 さんは俺と目が合うとニカッと笑い『大丈夫!』と声を発してくれた。
それに俺は笑んで『はい!』と答えた。
うん。
大丈夫!
うまくやれるさ。
・・・きっと・・・。
そう。
きっと・・・。
ともだちにシェアしよう!