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メモの確認
「おはよう。春海 」
店の中に入ろうと戸口に手を掛けたと同時に後ろから声を掛けられた。
その声は綺麗な落ち着きのあるイケボでその声を聞いた俺はゆっくりと後ろを振り返った。
「おはよう。花咲月 くん」
俺の挨拶に花咲月 くんはもう一度『おはよう』と言って完璧な爽やかスマイルを満面に滲ました。
はい。
今日も本当にイケメンですね。
「朝イチで花束が入ったから今から作るけど見る?」
花咲月 くんのその言葉に俺は『はい!』と答え、大きく頷いた。
それに花咲月 くんは『よし』と声を発すると俺が開けようとしていた戸口をスッと開けて店の中へとスタスタと入って行ってしまった。
そんな花咲月 くんのあとを俺は慌てて追った。
花咲月 くんはレジ前のコルクボードの前に立つとそこに貼られたメモたちに目を通していった。
俺も花咲月 くんの横に立ち、そのメモたちに目を通していき、朝から泣きたい気持ちにさせられた。
【皆さん。おはよー。イケメン店長 笠井は本日、お休み致します! 朝イチの花束は花咲月に制作依頼してまーす。よろしくネ。イケメン店長 笠井】
【配達行ってきます♪ 安藤】
【遠野 春海。マジ許さん。マジ嫌い。マジ消えろ。武田】
・・・・・え?
いや・・・マジ許さんって・・・。
マジ嫌いって・・・。
マジ消えろって!!
何で俺、そんなに剛志 さんに嫌われてるの!?
理由はわかっているけれどそれ・・・完全なる剛志 さんの誤解だからね!?
なのになんで俺、こんなにも理不尽な扱い!?
しかも剛志 さん、筆圧が強すぎて若干メモ用紙に穴、空いてるし!!
どんだけ恨み強いの!?
しかもその個人的な恨みを職場の連絡ボードに普通に貼れる剛志 さんの神経どうなってんの!?
もうこれ・・・完全に公開処刑じゃん!!
「今日の連絡事項は大したことないね」
え、えぇー!?
俺へのメモ、花咲月 くん、ちゃんと見てくれた!?
普通、一言ぐらい声、掛けないかな!?
『ドンマイ』とかそのイケボで言ってよ!!
そしたらちょっとは今日、頑張れるから!!
てか、頑張るから!!
「あ。何か恨まれてるね。春海 。剛志 さんに」
そう言って優しく微笑む花咲月 くんは本当にもうイケメンで爽やかでドSでもう本当に・・・もう本当になんなんだよ!!
「ところで春海 はなんでこんなに剛志 さんに恨まれてるの?」
「アハハハ~・・・何でですかね~? アハハハ~・・・」
俺はそう言って乾いた笑い声を上げた。
何で?
花咲月 くんがイケメン過ぎるからだよっ!!
花咲月 くんがイケメン過ぎるせいでその被害が曲がり曲がって俺に来てんだよ!!
完全なる誤解のとばっちりだよ!!
俺は満面に引き吊った笑みを滲ませ、ニコニコしている目の前の長身細身イケボイケメンを睨むように見つめ見た。
花咲月 くんは俺と視線が合わさると『頑張って』と呟いた。
ねぇ・・・。
コレ、俺が頑張ることかな?
俺が頑張って解決できることかな!?
「さ。花束を作ろうか」
花咲月 くんはそう言うとさっさと花束の制作へと取り掛かった。
そう・・・。
俺はあっさりと捨て置かれたわけだ・・・。
・・・チクショウ!!
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