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無視
~・~・~・~
俺は花を選びだした花咲月 くんのその手際の良さに驚かされていた。
花咲月 くんは花付きのいい綺麗な花をバケツの中から瞬時に選び、傷んでいるものはすぐに弾いて、そのままその花たちを花束にするべく、手の内で組んでいっていた。
左手でしっかりと花の茎を握り、バランスよく花を入れていく・・・。
(花咲月 くんは本当に簡単そうにやっているけれど・・・本当は難しいんだろうな・・・)
俺はそんな当たり前のことを心の内で呟いた。
それと同時に背後に不穏な気配 を感じた俺はその正体を確かめるべく、ゆっくりと後ろを振り返った。
後ろに居たのは剛志 さんだった。
剛志 さんは俺の少し後ろに立って俺を見て(睨んで)いた。
恐らく剛志 さんは店の裏口から入って来て憎い俺の背後に静かに回り込んだのだろう。
獰猛な餓えた肉食獣が獲物を狩る時と同じように・・・。
フラワーショップ・フェアリーには正面の出入り口(お客様用の出入り口)と裏口(スタッフ用の出入り口)とがある。
基本的にスタッフ用の裏口は朝一番に来た人か一番最後に帰宅する人が使う出入り口でそれ以外の時は表の入り口を使っていいとイケメン店長 笠井 さんから聞かされた。
俺と花咲月 くんが出勤したときにはもうフェアリーは開店済みだった。
だから俺と花咲月 くんは今朝、正面の出入り口から店の中へと入った。
そんなあまり使わない裏口をわざわざ使い、俺の背後を取る細マッチョ系爽やかイケメン剛志 さんは本当に怖い。
いや、怖すぎる・・・。
「・・・あの・・・おはようございます。・・・剛志 さ・・・」
「おはよう。花咲月 」
・・・おいぃぃぃー!!
今、あからさまに俺の挨拶、無視したよね!?
剛志 さん、今、絶対にあからさまな無視した!!
俺、目の前にいるのに!!
俺のこと睨んでたのに!!
花咲月 くんよりも俺の方が近い距離にいんじゃん!!
その俺をガン無視ってどう言うこと!?
どんだけ俺のこと嫌いなの!?
もう視界に入らない(入れたくない)ほど俺のこと嫌いなのかな!?
俺はその剛志 さんからのあからさまな嫌がらせ・・・と言うよりはいじめに軽い目眩を引き起こした。
俺は今までこれと言ったいじめや嫌がらせを受けてこなかった。
それ故に俺はそう言ったことに免疫がない。
免疫がないのにこの仕打ちはかなりキツい・・・。
それに無視が一番、キツいと俺は思う。
うぅ・・・心が痛い・・・。
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