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少女
「あ。おはようございます。剛志 さん」
そう言ってニコリと微笑む花咲月 くんの手には立派な花束がもう出来上がっていた。
本当に花咲月 くんは手際がいい。
それは花のド素人の俺でもわかることだった。
「相変わらず花咲月 は手際いいな。本当に惚れ惚れするよ」
そう言ってニコリと微笑む剛志 さん・・・。
いやいや・・・。
アナタが惚れ惚れしてんのは花咲月 くんのその手際のよさだけじゃないだろ・・・。
俺はそう心の内でツッコミつつ、苦い笑みをじんわりと滲ませた。
「しかも俺の好きな花ばっかりだ。嬉しいな」
剛志 さんはそう言うと俺を無視したまま花咲月 くんの元へと行ってしまった。
剛志 さんは花咲月 くんの前に立つと本当に爽やかな笑みを満面に滲ませて花を握っている花咲月 くんのその手を不自然に握り取って嬉しそうに目を細めた・・・。
やだぁー!!
怖い怖い怖い!!
何!?
俺、今、何を見せられてるの!?
だいたい『俺の好きな花ばっかりだ』って何!?
それ、アナタの花束じゃないよ!?
何なの!?
まさか記憶改竄!?
「あ、そうなんですか?」
花咲月 くんは剛志 さんに手を握られていることに全く動じず・・・と言うよりは握られていることにも気づいていないかのような様子でそう言って笑んでいた。
花咲月 くん・・・動じないんだ・・・。
すげぇ・・・。
もうそう言ったことに慣れてんのかな?
・・・・・。
慣れてたら慣れてたで怖いし気の毒だな・・・。
と言うか・・・相思相愛・・・とかじゃないよね?
違う・・・よね?
俺は微笑み合い、手を握り合って(剛志 さんが一方的に握って) いる二人を複雑過ぎる気持ちで見つめていた。
そんな時だった・・・。
「コラー! そこ! 朝からイチャイチャしないっ! 新人くんが困ってフリーズしてるでしょ!」
そう店先から聞こえてきたその声は溌剌としていて高く、幼い少女を俺に連想させるものだった。
俺はその声のした店先へと目を向けて、その目を丸くした。
そこには細い腰に手を当てイタズラっぽい笑みを浮かべたロングツインテールの似合う可愛らしい女の子が一人、立っていた。
その子の身長は恐らく150ちょっとくらいでその身は細く、色は白い。
歳は・・・よくわからないが俺とそう変わりない気がした。
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