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キクちゃんさん
「あ。キク・・・お帰り」
そう言ったのは剛志 さんだった。
キクさん・・・キクちゃんって言うんだ・・・。
古風で可愛い名前だな。
そう思うと同時にキクちゃんさんと俺は視線が合わさった。
目の大きな子だと思った。
その目の大きさを更に際立たせるかのように切り揃えられたパッツン前髪はキクちゃんさんのその少女らしさを見事に増幅させていて、そんな可愛らしいキクちゃんさんに微笑み掛けられた俺は頬を赤くし、軽く会釈を返すことしかできなかった。
そんな俺からキクちゃんさんは目をそらすと花咲月 くんと剛志 さんに向き直り、また愛らしく二人に微笑んだ。
「たっだいまぁ~からのぉ~おっはよー! 花咲月 くんは今日も超絶美麗の嫌味な長身完璧イケメンだね! もうチ○コ爆発しろよ!」
え、えぇ~!?
俺は満面の笑顔でそう言って花咲月 くんに抱き付くキクちゃんさんにガビーンとさせられた。
それ、挨拶で言うことか!?
てか・・・下ネタ・・・。
「おはよう。キク。配達、お疲れ様」
それを微笑んで完全スルーする花咲月 くん・・・恐るべし・・・。
俺だったら狂ったようにツッコミ入れるわ・・・。
「ありがとー。てか、アタシの下ネタ無視すんな! 去勢してやろうか!」
そう言ってキクちゃんさんは花咲月 くんの股間に触れようと(明らかに握ろうと)していて、それを花咲月 くんは微笑み、楽々と制していた。
そして、俺はと言うとそれに更に衝撃を受けて強烈な目眩を引き起こしてしまっていた。
ここ・・・こんな職場なの?
てか、キクちゃんさんみたいに可愛らしい女の子が普通に下ネタって・・・。
しかも普通に触ろうとするとか・・・予想外過ぎて俺のHPはもう赤色ゲージだよ・・・。
誰か回復アイテムお願いします・・・。
「キク。花咲月 のに触ろうとすんな。俺だってまだ触ったことないんだぞ」
は?
そう真顔で言ったのは剛志 さんだった。
もう俺は何て言ったらいいの?
てか、『まだ』ってなんだ!?
今後そう言った予定があるのかな!?
それをサラッと爆弾投下するんじゃないよ!!
そして、それを花咲月 くんは微笑むだけなのかよ!!
この職場、朝から怖すぎるよ!!
「だってぇ~・・・」
そう言ってむくれるのはキクちゃんさん。
いや・・・普通に『だってぇ~・・・』じゃないからね?
完全にセクハラだからね?
「触るんならアイツのにしろ。なかなか良さそうだぞ?」
そう言って剛志 さんは俺を親指で指差し、ニヤリと微笑んだ。
おまっ!?
マジでふざけんなっ!!
何が『なかなか良さそう』だ!!
アンタは俺のナニの何を知ってんだよ!!
俺は口に出せないそのツッコミ を虚しく心の内で叫んでいた。
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