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地球が消滅する4日前
そして今日も西野達は俺の家に来た。
今日を含めてあと4日で地球が消滅しようとしているのに、この不毛なやり取りを続けて疲れてきた。
俺は西野が憎くて土下座させているわけじゃない。
西野が勝手にしているんだ。
土下座すれば人は何でも言うことを聞いてもらえるなんて思っているのか?
やめてくれ。テレビの見すぎだぞ。
「おい、もう土下座すんのやめてくれよ。」
「じゃあ!」
嬉しそうに喜びに満ちた顔を上げた。
漫画だったら顔の周りに花でも咲いているくらいににこやかだ。
「…いや、そういう意味じゃないから」
「頼むよ。もうすぐ死ぬんだから最後くらい、頼みを聞いてくれ!」
「無理なものは無理。ほかを当たってくれ。それにお前の土下座は見飽きたからもうするな。」
「じゃあ逆立ちでも………」
「そういう意味じゃないっ。何もするな。」
「篠崎…」
「大体後ろにいる女の子は何なんだよ。今日は二人も増えてるじゃないか。」
「彼女たちは………」
西野の話によると彼女たちは、毎日毎日俺のアパートに通い詰める西野に一目惚れし、後を追いかけてきたとのことだ。
4人の女の子達は紹介されたことをきっかけに土下座させている俺を睨みつけて、今まで言いたかったことをここぞとばかりにギャンギャン騒ぎ出した。
「彼がこんなに頼んでいるんだから、お願い聞いてあげてよ。」
「そうよ。可愛そうじゃない。」
「アンタが言うことを聞いてくれたら、彼はもうここに来なくて良いんでしょ?ケチケチしないで早くしてよ。」
俺が黙っていればいい気になって、お前等なにも知らないくせに言いたい放題かよ。
自分の要求ばかり人に押し付けやがって!!
「ふざけんなっ! 西野が狙ってんのは俺の尻なんだぞ! ホイホイ言うことなんか聞けるかっ!!」
「えっっ!!」
「BLなの?」
ざわつく4人の女子達の顔色が変わっていく。
ザマアミロ、お前等が好きな男は俺に夢中なんだよ。いい気味だ。
勝ち誇った心の声が虚しい。
だが一人だけツワモノがいた。
「BLでも良いわ。私は彼が好きなの。貴方、お尻でもなんでも早く差し出しなさいよ。」
人間、死が近づくとこんな可愛い女の子でも自分の欲望むき出しになるのか。
………などと スン と一人冷静になってしまう。
「ごめんね。俺は篠崎しか愛せない。君達がいくら待ってても無駄だよ。」
「………」
「………」
「………」
「………」
西野に言われた女子達はあっという間に新しいイケメンを探しに消えていった。
切り替え早っ!!
これが種族保存の本能なのか…すげぇな。
西野、ここに来るまえに最初から彼女達に言っといてくれよ。
「やっと二人っきりになれたね。さあ、愛し合おう。」
「だから嫌だって言ってんだろっ!!!」
「ごふっ!!」
西野の腹を思いっきり蹴ってやると後に吹っ飛んだ。
「地球が終わっちまうかもしれないのに。童貞のまま、なんでお前に掘られて死ななくちゃならねぇんだっ!!」
「童貞?…童貞じゃなければ良いのか?! それならさっきの女の子たちに頼もう! その後俺と…」
「思考回路がさっきの女と一緒じゃねえかっ!!」
俺を引っ張っていこうとする西野の手を振り切って怒鳴りつけた。
「やめろっ!! 大体ナンパなんてなぁ、地球消滅ニュースが流れたその日に沢山しまくったわ。声かけた女全員に振られたんだぞ。その上、アイツ等、俺になんて言ったと思う?」
「さあ?」
「『アンタみたいな不細工となんでわざわざしなくちゃいけないのよ。イケメンとなら良い思い出になるのに』って言われたんだぞ。死んじまうのに思い出も糞もあるか。」
「………お前にHしたいって声をかけてもらえるなんて羨ましい。」
西野に心の底からムカついて、手近にあった空のペットボトルをアイツの顔めがけて投げつけると、軽いポコンという音を立ててクリーンヒットした。
「いた。」
「馬鹿にするのもいいかげんにしろっ!! 何が羨ましいんだよっ!! もう二度と家に来るなっ!!」
「えっ!」
「絶交だって言っているんだ。出ていけーーー!!」
「そんな、篠崎………」
口も聞かず背をむけていると 西野の落ち込んだような足音が玄関へ向かっていき、静かにドアが締まった。
うるさい奴らがいなくなって清々した。
地球が消滅するまで、あと3日
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