1 / 71

第1話

 デカい指が俺の中を擦る。  そこに凝りがあることを俺はもう知ってる。  指がそこに届くのが待ちきれない。  その凝りを擦られたなら、思わず声が出てしまう。  「ああっ・・・やだぁっ、ああっ」  触られたかったのにやだぁって何だよ、と自分でも思うんだけど、この気持ち良さには受け入れられないものがあるんだよ。  やられてみろよ、わかるから。  「やだぁっ・・・やだぁ」  俺はそう言いながらも尻を振って、その指を味わっている。  擦られるのたまんない。  なのに泣いてしまうのが止められない。  やられてみろってわかるから。  「ケツまで振って、泣いて喜んで、可愛いぜ、ホント」    低いバリトンが耳のそばから囁いてくる。    それが、脳に響いて、ゾクゾクしたものが背中に走る。  この声はヤバい。  ヤバいんだよ。  「んっんっ」  俺は喘いで指を締め付けてしまう。  「前触って・・・触ってぇ」  俺は泣いて頼む。  背後から抱きしめながら俺の尻を弄るこの男が、もう片方の腕で俺の両手を掴んで触らせてくれないんだ。  ガッチガッチに硬くなった俺のそこを触らせてくれないんだ。  擦りたいのに。  出したいのに。  「ダメだ。我慢したら気持ち良くなるからな。オレはお前にもっと気持ち良くなって欲しいんだ」  バリトンが甘く囁いてきて、耳まて噛んでくるけど、ただの意地悪としか思えない。  「お願い・・・お願いだからぁ」  俺は泣いて頼んで、自分からその唇にキスしてしまう。    俺を見つめるオレンジ色に近い、異様なまでに光る瞳が細められるのを見る。  わらってる。  俺を喰い殺す獣みたいな目なのに何故か、安心する。  凶暴な狂った笑顔にしか見えないのに。    でも俺の口の中を犯す舌は優しく甘い。  貪り欲しがるくせに甘い。  俺はその舌を噛んで吸った。  唾液が欲しい。  でもその舌が引き抜かれた。  欲しいのに。  俺はまた泣く。    「そのお願いは聞けないけどな、イかせてやるよ。お前は可愛い。ホント可愛い」  男の指がじっくりやらしく弄るうごきから、イかせるための激しいうごきに変わった。  「気持ちいい、気持ちいい!!」  俺は泣き叫ぶ。    普段は声が出せない分思い切り。     俺の家は壁が薄い。  俺は前住人が孤独死した長屋に格安で住んでるんだけど、なんせ、この長屋は壁が薄い。  だから、男に夜な夜なされる時、声を殺さないといけないんだけど、この男、長屋の住人、じいちゃんばあちゃん達に温泉旅行をプレゼントして、三日間俺に怒られることなく、俺の身体を自由にできるようにしやがった。  いつの間に長屋の住人達と仲良くなってるんだよ!!  だけど、声を我慢しなくていい機会はありがたいとも思ってしまう。  「ほら、後ろだけでイった方が気持ちいいだろ、イけよ」  男が言った。  その言葉を聞いて、俺はイった。    後ろの穴を弄られただけで。  前から思い切りよく吹き出させながら。  ああっ、  ああっ  ああああ  俺は思い切り叫んだ。  我慢しなくていいのは。  確かに。  良かった。  「可愛い。可愛い。可愛い、なんでこんなに可愛いんだ」  男が唸る。  俺の首筋に歯を立てながら。  ただし、跡を残すのをゆるしてないので、そこは我慢している。  抱きしめられた。  イキながら痙攣する身体を。  俺はぼんやりと男を見つめる。  整ってると言えないこともない顔は、半面が炎のタトゥーに覆われている。  生きながら燃やされているかのように。  凶暴なオレンジの瞳は燃え上がっている。  狂気のように。  褐色の肌はおそらくこの国以外の血が入っている。  平均身長の俺を女の子みたいに扱う巨大な身体もそうだろう。  こんな外見でどうやって近所のじいちゃんばあちゃん達と仲良くなってるんだ。  全身タトゥーだぞ。  明らかにカタギじゃないいし。  だが、この男は目的のためなんでもするのを俺は知ってる。  俺は男の頭を撫でた。  それでもコイツはいい子にしたのだ。  今日だって。    ご褒美だ。    「シていいぞ。お前もつらいだろ」  俺がそう言ったから、男は俺に襲いかかった。  「よし」と言われたから。  俺の穴を凶器でしかない男の巨大なそれが、擦りなぞる。  それが気持ちいい。  でも、それが入ってくることはない。  俺が許してないから。  「可愛い、可愛い、可愛い」  男は呻いて、俺の尻と太ももにその巨大な性器を挟みこみ、動き始めた。  素股ってヤツだ。  巨大な性器が俺の睾丸と性器の裏筋をこすってくるのがたまんない。    「いいっ、いいっ、気持ちいいっ!!」  俺は我慢しないで叫んだ。    「挿れさせてくれたら・・・もっと気持ち良くしてやるのに」  男がうめいたが、それはなし。    これ以上好きにされてたまるか!!  俺がイっても、擦られつづけて、出したばかりのそこをさらに擦られて、気が狂いそうにされながらまたイカされて、男がやっとイって。  それでも収まんないないって感じなので、俺が男のデカいのを咥えてやって。  ああ、そうだよ。  もうすっかり慣れてしまったんだよ!!  入りきらないのを咥えるだけ咥えて、指でこすって。  飲んでやってんだよ!!  だって。  泣いて喜ぶんだもん、コイツ。   俺の髪を愛しげに撫でながら、しゃぶってる俺を見て泣くんだもん。  喜んで。  「お前の物だ。オレの全部はお前のもんだ」  そう言って終わったら俺を抱きしめて泣くんだもん。  なんか。  まあ。  間違ってるのは間違いないんだけど。  「お前のためなら誰でも殺してやるからな、誰だって」  男は泣くけど、俺は困る。  「いや、それ、要らないから、ほんと要らないから、マジ要らないから」  俺はこの狂った男にずっとそう言っているんだが、伝わる気がしない。  だけど、俺は男の髪を撫でる。    昔、飼っていた犬を撫でたみたいに。  眠るまで撫でるんだ。    「寝ろよ、お前も」  俺は囁く。    男は俺の鼻に鼻を擦り付けてくる。  犬みたいに。    「可愛い、可愛い」  男は囁いてくる。  俺は「愛してる」という言葉も意味もしらない男の髪を撫でながら、いつか眠っていた。  眠りは心地よい。  心地よいんだ。      

ともだちにシェアしよう!