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第36話

 1週間。    俺と内藤は携帯片手にSNSに張り付いている。  お風呂でちょっとはエロいことしてしまうけど、男にはおあずけさせている。  まあ、とんでもなく痕をつけまくった罰もかねて。  まだギプス外せてないから!!  でも、風呂ではしてるけどな。     だって泣くから。  せっかく広げたのにって。  ちょっとだけ、してる。  ディルドで中をこう、ね。  まあ。    したいのもある。  でも男は不満らしくて、ブツブツいいながら、携帯片手にSNSしている俺を膝にのせてる。  子供みたいに膝にのせられるのをもう拒否する気力はない。  もうこれは椅子だと思ってる。  ずっと俺の頭皮の匂いや首筋の匂いを嗅いでるだけなんだが、それ、楽しいか?  膝に置いたノートにメモる。  フワの行動をだ。  あのストーカーの彼女、プロだった。  プロのストーカーだ。  この分析方はすごい。  大体、フワの行動の流れみたいなのは見えてきた。  来週の月曜日、フワはおそらく、市内のバーに行く。  俺達なんか入れてもらないない、会員制のバーだから、ここの外で待ち構える。    ちょっと気になるのは「新緑会」だった。  たまに、フワやフワの仲間の一部が突然呟く。  ジョークみたいに。    その呟きに何か特に誰かが返すわけではないのだ。  何だ?  これは。  エア交流会とか言って笑ってるけど。  身内ジョークにしても出来が悪すぎる  彼女のセンサーに引っかかったことからも何かあると思う。  ストーカーのセンサーは凄まじい。  俺は良く知ってる。  俺を膝にのせて、俺の髪を齧っているこの男は誰にも話したことのない俺の初恋相手を知ってる。  どうやってだか突き当ててる。    「  の方がいいのか!!」  と前にヤキモチやかれたからな。  話しかけることさえ出来なかった彼女のことをなんで知ってるんだよ・・・。  なのでストーカーが引っかかるものは気にしておくべきだ。  だが、新緑会を呟くメンバーの中にその女がいた。  もう、フワによってサロンからは追放されたはずだけど。  内藤を襲ったあの女だった。  フワが追放してから、女はサロンの活動は確かにしていなかった。  SNSの上では。   卒業します、みたいな宣言も載せてたし。  でも、女は新緑会を呟いていた。  これは。  これは何?  月曜日にフワに会う前にこの女に会う必要がある。  女が経営している美容サロンの住所をチェックする。  男は何も言わない。  間違いなく俺がしていることを全てチェックしているだろうけど。  ただ、男は目だけで訴えてくる。  男の目は、犬と一緒で雄弁だ。  俺はため息をついてキスをしてやった。  風呂でしたエロいのじゃなくて。  軽くて優しいのを。  男は嬉しそうに笑った。  コイツはこういうベタな、甘そうなのが好きなのだ。  要求されて、髪まで撫でてしまった  喉をならされる。  「しないからな。片が付くまで」  言い聞かせたら、見えない耳と尻尾をショボンと垂らしたが、俺が寝るのをわかって、布団まで俺を抱えていく。  抱きしめて寝るつもりだ。   多分コイツは寝ないで俺を見てるけど。  背中から包み込まれるように抱きしめられるのは心地良かった。  胸の前にある男の指に、自分の指を絡ませてしまったのは自分でもわからない。  男が息をのむのがわかった。  ただ手が寂しいだけだ。  最近ずっと携帯持ってたから。  そう自分に言い聞かせる。  男のデカい指を握るのは。  なんだか安心して。  俺はすぐに眠ってしまったのだった。  男が泣いていたのを知ったのは、途中目覚めて俺の髪が涙でぐしゃぐしゃになっていた時だ。  男は俺に手を握られて、俺の髪に顔をうずめて泣いていたのだ。  コイツよく泣くから・・・。    「手なんかいつだってつないでやるから、それくらいで泣くなよ」  そう言ってしまってから、また一つ深みにはまったことに気づく。  でも。  まあ。  俺だってこの男に泣かれたくはないんだよ。  

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