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第38話

 いつもの俺だったら、女の子を追った。  女の子は怯えるそぶりもなかったし、タクシーに自分から乗っていたけど、必要以上に綺麗に着飾った女の子の需要なんて限られているからだ。  子供を欲しがるクソがいることは俺はもう知っている。  だが、男やドクターの言葉が俺を止めた。  フワが面倒なことになる、二人はそう忠告した。  変に関わることでフワが困るかもしれないと。  フワは知ってる。  絶対に知ってる。  俺の知ってるフワなら、子供がこんなことに巻き込まれているのを許すはずがない。  自分がされてたんだから。    じゃあ、何故?  俺は考えた。    フワを信じる。  子供が酷い目にあってるのに、と思ったけれど。    前のように、ただ飛び込むだけでは、助けられないのだ。  あの時のフワはまだ13才以下だったから、それでもあの男達は罪に問うことが出来た。  母親の関与も明白だったし。  その後、事件が公にもならなかったし、何の情報も流れて来なかったとしても、全て取り消すことなんかできなかったはずた。  一応。  でも、おそらく、今度の女の子達は13才は超えている。  だとすれば。  相手が法律的に裁かれない可能性も出てくるのだ。  彼女達の意志が確認できた場合は余計に。  13才以上の未成年との性行為自体は犯罪にはならない。  保護者や監督責任者でなければ。  本人の意志が確認されたなら。  これが現実だ。    あんな子供の自分の意志なんかどれほどの意味がある。  そうは思うけれど、売春などが立証されない限り、犯罪にはならないのだ。  だから立証されないようにはしている。  しているのは間違いない。  あの女の子達は俺の住む街の、不良少女といわれる少女達を思い出させた。  格好は随分違ったけれど。  あの美容サロンに来ている子供達は、綺麗に上品にキラキラしていたけど。  醒めた目でタバコを咥えてたりはしなかったけれど。  寂しい子供を狙う汚い大人はいる。  不良とされる彼女達は少しの優しさやお金や、自分を『大人』なんだと思い込むために、そいつらの手の中に落ちていく。  自分達が喰われていることにも気付かない。    それに気付いた時は、もう、自分が深い底まで落ちていて、這い上がることが困難になっている。  他の女の子達が好きな子の話で盛り上がっている時に、「子供の肉体」だけが目当ての男に貪られる。  子供時代を奪われて。  未来を喰われるのだ。  そして、責められるのは彼女達。  考えが足りなかった、と。  不良だと。  非行だと。  自分達より狡猾な大人が相手の、勝ち目のないゲームに参加させられて、だまされて。  食い尽くされて。  そんな女の子達を見て来た。  中には、俺の幼なじみの女の子もいた。  そうだよ。  初恋の言葉さえ交わせなかった、大人びた不良少女。  タバコを咥えた12才の彼女の姿に、今でも胸が痛くなる。  彼女は。  確かに、反抗的で、生意気だったけど、素敵な女の子だった。  言葉は交わさなかった。  でも、俺と犬に向かって笑いかけてくれた瞬間を忘れてない。  でも、中学生になった頃には、年上の男と出歩いて。  その後、風俗してると聞いた。  今はどこかへ消えてしまった。  夜の街では良く聞く話の一つだ。  何かあったとしても、少女たちだけが悪かったことにされる。  考え無しだったね、と。  そんなことはフワも知ってる。  おそらく、フワも言われたはずだ。  何故助けを求めなかったの?  何故嫌だと言わなかったの?  あなたの意志だったんでしょう?  タクシー追いかけて女の子を取り戻し、その先の相手を殴ったところで・・・それでは何もならない。  だから。  だから。  フワに会う。  フワは全部わかっているはずだからだ。   

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