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第39話
バーから出てくるフワを待ってる。
俺と内藤は今度はバーのちかくで立ちっぱなしだ。
もう、辛い。
ストーキングホント辛い。
あの男や、ストーキングの先輩である彼女に敬意を抱かずにはいられない。
ストーカーってスゴイな。
俺もう嫌だ。
本当はバーに入る前のフワを捕まえたかったけど、バーというよりは、クラブ?、俺には良くわからないところで、会場前にチケットを持ち、沢山並んでる若者達をすり抜けて、顔パスで店に入っていくフワは店のセキュリティーに守られて、呼んでる俺の声にも気付かなかった。
なので、待ってる。
出てくるところを捕まえるしかない。
フワが出てきた。
40代位の、ジムで鍛えてるのが丸わかりの男と一緒に。
男はフワの肩に親しげに腕を回してた。
おそらくドレスコードがある店で、カジュアルな格好が許されているところから、この男は成功者なんだろうとわかる。
サロンでもてはやされるタイプの。
俺はフワに向かって走る。
「フワ!!話がある!!」
俺は叫んだ。
フワは確かに俺を見た。
見たはずなのに、まるできこえなかったように、目をそらし、男に向かって笑う。
俺などいないように。
「フワ!!話をしよう!!」
俺は走りながら怒鳴る。
逃がさない。
絶対に逃がさない。
入り口からフワと男を見送るセキュリティーが俺に反応してる。
知ったこっちゃない。
俺は走る。
だか、俺はセキュリティーの男に捕まる。
「フワ!!」
怒鳴ってもフワは知らない顔で、男と一緒に車に乗り込んだ。
そして、車のドアが閉まる。
俺は見た。
フワはその男とキスをしていた。
男の首に腕を回し、舌を絡めるようなキスを。
「フワ!!」
羽交い締めにされる。
でもフワは俺の声を聞かない。
車が出た瞬間、セキュリティーの拘束が緩んだ。
俺は自分の腕を内側から外に回ようにしてその腕を外した。
常連さんの空手の先生から習った護身術だ。
後ろから羽交い締めにされても、人体の構造を理解していれば外せる。
俺は走ってセキュリティーから逃げ、そして車を追う。
車は出た。
だが、俺からは、いや、俺達からは逃げられないぞ、フワ!!
「内藤!!」
俺は叫んだ。
ヘルメットを着けて、自転車に跨がった内藤がフワが乗ってる車を追う。
俺も立てかけていた自転車にまたがり、内藤を追う。
内藤とは携帯で連絡できる。
マイクつきのイアホンで、話ながら走るのが最近の俺達のスタイルなのだ。
そう言えば、俺のバイトを言ってなかったな。
俺と内藤の。
俺達は自転車便だ。
自転車で書類を届けている。
俺達は。
この街を知り尽くしている。
車なんかに負けるかよ!!
「 方面にむかってる。先回りして」
内藤が言った。
「了解」
俺は走りながらヘルメットを被る。
俺達は街の道を裏道まて知り尽くしている。
俺から逃げられると思うなよ、フワ!!
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