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オマケ 内藤くん

 ドクターと呼ばれてる男は、彼がとても気に入っている。  彼、もちろん内藤くんだ。  今日もしっかり、見つめている。  内藤くんの向かいのマンションに引っ越してきたのは内緒だ。  だってカメラも盗聴も携帯へのハッキングも禁止されたのだ。  アイツに逆らう気はない。  命は惜しい。  恋だって命あってのものじゃないか。  だがたまたま向かいのマンションの向かいの部屋に入居して、たまたまカーテン越しに双眼鏡で内藤くんを見える範囲て見る分には問題がないだろう。  バレなければ。  内藤くんはヤバい。  ドクターは内藤くんのヤバさに気付いていたが、あれは抵抗できるものじゃない。  支配できない閉ざされたあの感じ。  ゲームに慣れた者なら挑みたくなる。  拒絶し、閉ざされたあの内部に、入りたくなる。  成績、評価、どれをとっても普通。  あの男が御執心のクソガキの方が、むしろ評価のされ方は人によって高いと言える。  あのクソガキは妙に人の心をつかむのが上手いのだ。  ドクターですらもっと嫌っても良いはずなのに、ムカつく以上のモノがない。  命こそ奪わないまでも、やろうと思えば誰であろうと死ぬより酷い目に合わせることをなんとも思わないドクターが。  見た目以上に何かある、何かないとあの男があんなことにはならないのだ。  あんなあんな、あんなことに、あの男が。  エプロンつけて自宅待機だぞ。  恐怖さえ覚える変貌ぶりだ。   あの男が。  クソガキはヤバい。見た目はその辺のクソガキでしかないが。  内藤くんは違う。  あれは宝石だ。  手にした者にしかわからない。  きっと手にしたら自分だけに  自分だけに笑ってくれるのだ。  クソガキにはそうするように。  心をゆるす僅かな人間以外の、塩対応ぷりとかが、評価されて当然の、欲望をほしいままにしてきた者達が、ヤられてしまうことを内藤くんは気付かない。  その無自覚ぶりがいい。  いいのだ。  内藤くんが学校に行く時間だ。  ドクターはいそいそと外に出る。  内藤くんに声をかけるために。  出てきた内藤くんに、ドクターは上擦った声で挨拶する。  「お、おはよう内藤くん」  噛んだ。  違う。  こんなはずじゃない。  どんな身持ちの堅い女も男も落としてきたこの僕が。  一昨日だって、ドクターの甘い言葉に、女は危険過ぎる情報と、その身体をドクターに全て与えたのだ。  身体を堪能して、利用しつくした、奪いきった。  それが出来るからこそ「ドクター」はその世界では有名なのだ。    内藤くんは冷たい目でドクターを見た。  ドクターはゾクゾクした。  その冷たい視線に頭の裏まで焼けるようだった。    違う扉が開いてる。  「毎朝来ないで下さい。言いつけます」  それだけしか言わなかった。  でもドクターはその声を録音しておいた。  これ、寝る前に聞く。  好き。  内藤くん好き。  自転車に跨がり、去っていく姿を見つめていた。  どうやったら好きになってくれるの?  それがわからないことに困惑した。  「どうしたらいいんだろう」  ドクターは立ち尽くす。  詐欺師の初恋は。  かなり難しい。  終わり

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