47 / 63

第47話

1週間後、圭太は新宿に向かった。琉季に会うためだ。まだ戻るというわけではなく、1回だけ会おうと思った。 連絡をしてから行けば良いのだろうけれど、サプライズで彼の店を訪れることにしている。  再び新宿の地を訪れたものの、緊張してどう接して良いか分からない気もしてしまう。 「け、圭太……」  店に指名で現れた圭太を見て、琉季は思い切り目を見開いた。 「ひ、久しぶり……」 「どうしてここに?」 「る、琉季さんが写真送ってきたんでしょ?」  顔を真っ赤にしながら、圭太は答えた。薄暗い店内では分かり辛いだろうけれど。  ようやっと琉季はシートに座る圭太の横に腰かけた。 「それはそうだけど……黙ってくるとは思ってなかったからさ」 「黙って来てごめん。それと……本当にごめんなさい……」 「……何が?」  分かっているだろうに、琉季は敢えて聞いてきた。 「琉季さんから、去ったことだよ」 「うん。あ、ちょっと!」  琉季は、傍を通りかかった店舗運営スタッフを突然呼び止めた。 「VIPルーム空けといてくれ」 「え?」  スタッフは一瞬狼狽えたようだった。 「いいから!押さえといて!頼む!」  そう言って琉季は彼に手を合わせた。 「分かりました。貸し切りにしときます」 「サンキュ」  琉季が礼を言うと、スタッフはお辞儀をして去っていった。 「瑠季さん?」 「お前、話しあるから、こっち来い」  瑠季は圭太を立たせようとしたので、圭太は戸惑った。 「え?話しならここでも……」 「真面目な話しだし、雑音入れないで落ち着く場がいいと思うからさ」  VIPルームは、上客などしか入れない特別な空間だ。 高級酒を入れたこともある圭太でもVIPルームに入ったことはない。 だから、まさかこのタイミングで入ることになるとは思いもしなかった。

ともだちにシェアしよう!