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不変

「……つっかれた~」 結局、その日の夜になっても秀吉は元の姿に戻らなかった。 『じぶんのへやでねたい』と言うので秀吉の部屋に帰ってきた二人。当然、今の秀吉をひとりには出来ない真琴も一緒にお泊まりだ。 (…元々、泊まるつもりでいたがな) ベッドの海にダイブしていた秀吉が、ショボくれたように猫耳をふせ真琴の方を見る。 「……なんでもどらへんのやろ」 そんな秀吉の側に行きベッドに腰をかける真琴。そっと秀吉の頭に手を乗せ、優しく労るように撫でる。 「…秀吉。大丈夫だ、俺が必ず戻る方法を探してやる」 「せやけど…、きょうだっていっぱいためしてみたやん」 「そうだが、まだやってない事があるのかもしれない」 「……それもだめやったら?…おれこのままねこになってまうんじゃ…」 秀吉の目尻に溜まっていた涙の雫が零れる。 一粒零れ落ちると次から次へと溢れ、秀吉の綺麗なオッドアイを濡らしていく。 「……もし秀吉が猫のままで戻れなかったとしても、俺はずっと秀吉の側にいる」 「……せやろか。もしこのままやったら、もうまことといちゃいちゃはできへんのやで?」 「………、…そ…れは」 「…ほらな。いちゃいちゃのできないおれはまことにきらわれてすてられるんだ!…わ~んっ」 大粒の涙を流しながら泣きじゃくる秀吉。 真琴は胸が締め付けられる想いにかられ、秀吉を抱き上げると優しく、きゅっと抱きしめた。 「そんな事は絶対しない!たとえイチャイチャが出来なくても、俺の秀吉が好きだという気持ちは絶対に変わったりしない!」 「……………まこと」 真琴の腕の中、変わらない愛情に包まれ秀吉の不安な想いが次第に消えていく。 「…………ありがとう」 真琴の胸に顔を埋めた秀吉がそうつぶやくと、真琴は秀吉の頭をなで猫耳にやわらかなキスを落とした。 「………ん」 「……もう寝るか?今日は疲れただろ?」 「…………せや…けど。………まこと…」 「………なんだ?」 「………………ここにも、………ちゅー…ちょうだい?」 真っ白な頬を染め、上目遣いで自分の唇を指さす秀吉。 その愛らしい仕草に一瞬で理性がぶっ飛びそうになる真琴。 「…………………、、」 「…………ダメ…やろか」 しゅん…と、哀しそうな顔になる秀吉に慌てふためく。 「だ、ダメなんて事はない!むしろっ(ウェルカムだ!)」 「……え?」 「…いや、その、…か、軽くな」 「…ん。…かるく…たのみますわ」 目を閉じ上向き加減に顔をよせる秀吉に、真琴はごくりと生唾を飲み込み、そっとその小さな唇に合わせた。 「………ン」 触れるだけのキスだったが、やわらかな感触にジーンと感動していると、 「…………え、…あ…れ?」 と、戸惑うような声が聞こえてきた。 ん?、と思った真琴が目を開けると、目の前には元の大きさに戻った秀吉がいる。 「秀吉!?」 「……真琴、俺、元に戻れたんやな」 嬉しさでキラキラとした笑顔を見せる秀吉だったが、その頭には白い毛の耳…猫耳がまだ生えたままだ。 「…いや、…喜んでいるところ悪いが、まだ完璧には戻れていない」 「…へ?」 戸惑う秀吉の手をとり、頭上の猫耳を触れさせてやる真琴。 「……なんでや。…戻るんやったら一発で戻れって話やわ」 がっかりして膨れっ面になる秀吉に、ニヤけ顔になってしまうのが抑えきれない。 「…俺は今の(猫耳)秀吉の側にだって、ちゃんといるぞ」 「……そないニヤニヤした顔で言われても嬉しーないわ。ちゃんと考えてや」 呆れた秀吉が真琴から離れようとするが、真琴は秀吉の腕をとり自分の方に引き寄せる。 「考えてるぞ。例えばキスだけだからちゃんと戻らなかったのか?とか。最後までスれば元に戻るかもしれない、ってな?」 「……それって、真琴がシたいだけやないの?」 「ああ、そうだな」 「…………あほぉ」 「これでもずいぶん我慢したんだぞ?でも小さな秀吉にスるわけにいかないし、今の秀吉ならシてもいいだろ?」 「………………せやけど…な」 「それに試してみる価値はあるだろ?」 「………それで戻らへんかったら、…いてこます」 顔を真っ赤に染め上目遣いににらむ秀吉に、つい頬が弛む真琴。「…ああ、いいぞ」と囁くとそのままゆっくりベッドへ押し倒していったのだった…。 翌日。 「…………元に戻って、良かったな」 「………………ヤりすぎや、自分」 ベッドにはうつ伏せで動けない、猫耳のない秀吉がいた。 「……悪い」 「悪い思うんやったら、加減してや。…せっかくの誕生日デートの予定が台無しやん…」 「猫化した秀吉に加減は無理だ。…だが、デートの埋め合わせはする」 「…………絶対やで」 恨めしそうで…でも恥ずかしそうな秀吉が、頭から被ったシーツから顔だけ出してそうつぶやく。 そんな姿にも愛らしい!という感情が溢れて止まらない。 「……約束だ。あとでお祝いだけでもしよう。…誕生日おめでとう、秀吉」 こめかみにそっとキスを落とすと、その日はつきっきりで秀吉の看病をしたのだった…。

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