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ダンとリオがレイと共に生活しているのも、レイを守る為だ。この生活も、もう十五年になる。ダンとリオはその長い間、夫婦の振りをして、レイはリオの妹として、この村で暮らしていた。
身寄りのないレイにとっては、ダンとリオは本当の親のような、兄や姉のような存在で、それは、ダンやリオにとってもそうなのだろう。
大事に思えば思うほど、心配も増えてくる。リオは不服そうに唇を尖らせて俯いたレイを見て、そっと息を吐いた。レイが心配だから、大事だから、リオも黙っていられないのだ。
「それに、いくら村の外れにあるからって、毎回こんな騒ぎを起こしてたら、村にも迷惑がかかるでしょ」
諭すようにリオは言ったが、それにはレイはパッと顔を上げた。
「それなら大丈夫だろ!俺らが来る前より、この村に来る盗賊の数は減ったっていうし」
そう自信満々にレイは胸を張ったが、リオは頭を抱えるばかりだ。
確かにレイが言う通り、この村への賊による被害は減っていた。
このタタスの村は、レイ達が秘宝の噂と共に来る前から、盗賊などの善からぬ者達が身を潜める場所となっていたという。
タタスは辺境にある静かな村だ、国境に近い山間にあり、この付近に抜け道でもあるのか、身を潜めて行動しなければならない者達にとっては、足を休めるに丁度良い場所のようだった。レイの噂によって、盗賊が村にやって来る事はあるが、以前のように村を荒らされ、食料を奪われ、家を占拠される事はない。酒場に盗賊が来なくても、村の騒ぎを聞きつければ、レイ達は揃って盗賊を追い払いに駆けつけたし、初めこそ、村の人々から厄介者扱いされていたレイ達だが、今となっては村の用心棒として頼りにされていた。
なので、レイは堂々と胸を張ったのだが、リオは頭を振ると、再びレイの額を小突いた。
「いて!」
「だから、そういう問題じゃないのよ!もうちょっとやり方があるでしょ?さっきだってあなた、自分から盗賊に突っかかっていったじゃない!店に入って来た途端、胸倉掴みかかる人間がいる!?」
「だって!明らかに荒らしに来ましたーって感じの面構えだったじゃん!そしたら、やっぱり俺目当てだったじゃん!」
「だからって、それで人質に取られてたら世話ないでしょ!」
「それは、」
「やっと会えた」
レイがリオに気圧されていると、突然、そのような声が聞こえてきた。普段なら、扉の開閉の音で人が来た事が分かるが、残念ながら店の入り口は盗賊達に蹴破られてしまい、なくなってしまっている。そうでなくとも、口論に夢中になっていた為、人が来た事に全く気づかなかった。
レイが驚いて店の入口へ目を向けると、すっかり扉が無くなってしまった店の入り口に、兵士の鎧を着た男が立っていた。今まで二人の口論には目もくれず、せっせと店内の片付けをしていたダンも、兵士の姿を目に留めると、すかさず二人の元に駆け寄り、レイとリオをその背に隠すように立ち塞がった。その背後では、リオもレイを背に庇い後退っている。
「城の兵士様が何用でしょうか」
ダンは警戒を強めた声で問う。兵士の格好をしていても、安心は出来なかった。国境の警備の際に、兵士がこの村に立ち入る事は間々あるが、それでも、一人でふらりと村に入る者はいなかったし、兵士に扮してレイを狙う輩もいたからだ。
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